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成年後見制度

このコーナーは、法律問題について、初歩的なご説明をするというものです。
そして、私は、「不動産取引」について、数回にわたり、相談に回答する形式で解説することになっています。

今回の相談はこちらです。

Q
私は父と長年同居をして介護をしてきたのですが、最近父の痴呆が激しくなってきまして、同居して介護するのにも限界を感じてきました。そこで、父が持っている不動産を売却し、その代金で介護設備や療養設備が充実した老人ホームに入居してもらおうと考えておりますが、父は身のまわりの状況が全く判断できない状態です。なお、兄は、父の不動産の売却と数百万かかるという老人ホームへの入居に反対しております。

私だけで父の不動産を処分したり、そのお金で老人ホームの入居契約を締結することは問題ないのでしょうか。


A
1 民法上、法律行為(不動産の売買契約を締結したり、介護契約を締結すること)をするには「意思能力」が必要とされています。「意思能力」とは、自己の意思に基づいて判断し、行動する能力のことです。そして、「意思能力」が欠ける法律行為は、無効になります。

本件では、お父様ご自身には意思能力がない状況と思われますので、お父様ご自身では法律上も不動産の売買契約はできないものと思われます。また、意思能力がない場合には、委任契約もできませんので、他人が本人から依頼されて法律行為を代理することもできません。

そうすると、後日、将来相続が生じた際に反対されていたお兄様との関係で、上記不動産の売買契約等の有効性について紛争になるおそれがあります。

2 後見制度とは

従いまして、本件では、家庭裁判所にお父様の後見人開始の審判の申立をし、後見人が選任された後、後見人を通じて、上記のような不動産売買契約等を行うべきだと思われます。

「後見開始」の審判は、「精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く常況にある者」に対してできます。また、本人の判断能力の低下の程度に応じて、後見に至らなくても、「事理を弁識する能力が著しく低下している者」に対しては「保佐」の制度、「事理を弁識する能力が不十分な者」に対しては「補助」の制度が適用されます。

なお、後見開始の審判をするには、本人の判断能力の低下を調査する為に医師の鑑定を経なければなりませんが、その鑑定料も、従来は30万円程度かかりましたが、近時は書式を定型化するなど工夫をすることで10万円程度に抑えられております。

また、申立をしてから後見人選任までの期間ですが、事案によって異なるものの、約3ヶ月程度かかるケースが多いです。

このようにして、後見開始がなされ後見人が選任されると、後見人は、裁判所及び後見監督人の監督の下、本人の利益の為に財産管理行為と身上看護行為をします。

財産管理行為とは、例えば、高額の預金を引き出して本人の生活費に使う、不動産を売却して本人の生活費に充てる、不動産を賃貸に出して利益を挙げるなどして、本人所有の財産を管理することです。

身上看護行為とは、後見人自らは実際に本人を介護する義務を負うものではないので(後見人が実際に介護をしてもかまわないのですが)、通常は、介護サービス契約の締結や病院・老人ホームへの入院契約の締結をして、介護士や医師といったその道の専門家を通じて本人の身上看護をすることです。

後見人には、通常は信頼のできる親族や弁護士、司法書士、税理士などが選任されます。今回の法改正で複数の後見人の選任も認められるようになりましたので、不動産取引等の財産管理は弁護士等に、身上看護はご子息等に、それぞれ後見人の任務を振り分けて後見人を選任してもらうことも可能になりました。

また、申立人の方で後見人に適した人物を見つけることができない場合には、家庭裁判所の方で信頼のできる弁護士等の専門家を紹介してもらえる場合もあります。

なお、後見が開始されると、本人が一人で行った法律行為は、原則として当然に取り消せますので、万一、本人が、判断能力の低下から騙されて本人に不利な契約をしてしまっても、後見人によってその契約を取り消すことができます。

3 新しい成年後見制度について

なお、近時新設された成年後見制度は、従来の禁治産制度を下記の点で改正し、より利用しやすい制度に改善されております。


 ・名称が「禁治産」から「成年後見」へ変更した。
 ・成年後見の開始の審判は、戸籍には表示されず、成年後見登記簿へ表示されるようになった。
 ・成年後見人は1人ではなく、複数人を選任できるようになった。また、配偶者でなくても後見人に選任できるようになった。
 ・本人が行う日常品の購入などについては、本人の自己決定権の尊重の見地から、当然の取り消し権の対象にはしないことにした。

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秋山 亘 弁護士 寄稿担当:秋山 亘 弁護士
所属:佐久間・秋山法律事務所
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このコンテンツは寄稿担当弁護士の責任のもと作成されたものです。弁護士ドットコムは内容の正確性、真実性等について責任を負いませんのでご了承下さい。
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