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契約成立時期

このコーナーは、法律問題について、初歩的なご説明をするというものです。
そして、私は、「不動産取引」について、数回にわたり、相談に回答する形式で解説することになっています。

今回の相談はこちらです。

Q (1) 不動産売買に際して、話がまとまり買付証明書と売渡承諾書を交わしました。しかし、突然買主から「契約書調印はできなくなった。契約は白紙撤回する。」と言われてしまいました。このような場合、当時者間の基本的合意はできているわけですから、契約成立を主張して買主に代金の請求ができないのでしょうか。

(2) (1)の場合、逆に売主から、突然、「他に売りたいので契約調印はできなくなった」といわれ売買契約の締結を拒否されてしまいました。私は、契約調印日を直前に控え売買代金も調達し、また、購入物件で歯科医開業をしようとしていたので開業準備のための機材を購入したりしておりました。このことは、売主にもだいぶ前から話しております。この場合、何とか損害賠償を請求できないでしょうか。


A (1) 契約の履行請求の可否について

1. 日本の民法では、契約書を交わすことを契約成立の要件とはしていません。従って、裁判での立証の話は別にすれば、単なる口約束でも契約は成立しているのが原則です。売買の場合、売り主の「○○円で○○を売ります」という意思表示と、「買います」という意思表示が為されていれば売買契約は成立したことになります。

この原則に従えば、(1)のような場合にも、契約は成立しているように思えます。

2. しかし、不動産のような高額の物件を売買する場合には、裁判例も、契約成立を認定するには慎重な態度を示しており、買付証明書と売渡承諾書を取り交わした段階では、契約の成立を認めておりません。

不動産取引における「慣行」を重視して、契約書への調印が為される時までは契約成立に向けた「確定的な意思は有していなかった」などとして、契約の成立を否定しております。

3. このような裁判例に照らせば、(1)の事例でも、「契約の成立」までは認められていないわけですから、代金の請求まではできないことになります。

A(2) 損害賠償請求の可否

では、契約の履行請求はできないとして、(2)のような場合、不誠実な相手方に対して何らかの損害賠償請求をできないのでしょうか。

このような場合、損害賠償の請求はできるものと思われます。

裁判例は、契約締結に至らなくとも、契約交渉に入り、交渉が進んで基本的な合意に至った段階には、その契約交渉の成熟度に応じて、契約の相手方には、信義則上の「配慮義務」「説明義務」「誠実交渉義務」などが生ずるとしています。

「配慮義務」とは、相手方の人格・財産に損害が生じないよう配慮する義務、「説明義務」とは、契約締結に関して相手方に不都合な事由がある場合にはこれを積極的に開示し説明する義務、「誠実交渉義務」とは、従前の交渉経緯を踏まえて契約の成立に努めるべき義務のことです。

これらの義務に反した場合、不法行為による損害賠償の請求ができます。

本件では、売り主が資金調達や開業準備を進めていることを知っていながら、突然、売主に対し売却を拒絶したわけですから、誠実交渉義務や配慮義務に反しているといえます。

従って、買主は、売主に対し、調達資金の利息分や開業準備費の一部について損害賠償の請求ができます。

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秋山 亘 弁護士 寄稿担当:秋山 亘 弁護士
所属:佐久間・秋山法律事務所
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このコンテンツは寄稿担当弁護士の責任のもと作成されたものです。弁護士ドットコムは内容の正確性、真実性等について責任を負いませんのでご了承下さい。
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