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明け渡しと立退料

このコーナーは、法律問題について、初歩的なご説明をするというものです。
そして、私は、「借地借家問題」について、数回にわたり、相談に回答する形式で解説することになっています。

今回の相談はこちらです。


Q私は、現在借りている土地に建物を建てて飲食店を経営しております。 先日、地主から借地の賃貸借契約の期間が満了するとして、土地の明け渡しを求められました。

地主は、私に明け渡しを求める理由として、この土地を更地(さらち)にして賃貸ビルを新たに建設する予定だからだと言っています。

私は、地主にそれなりの金額を補償してもらえるなら、立ち退きすることはやむを得ないと思っていますが、地主は、「自己使用の必要性に基づく契約の更新拒否なので、立退料を支払う必要はない、多少の金額なら支払ってあげても良いが、せいぜい判子代程度に過ぎない」と言っています。

地主の言い分は法的に正しいものなのでしょうか。


A借地人が土地の使用を継続している場合において、地主が借地契約の更新を拒否するためには、法律上、「正当の事由」がなければなりません(借地法4条、借地借家法5条)。

正当の事由」があるかどうかは、一般に、

 ・地主が借地を自己使用する必要性
 ・借地人が借地を自己使用する必要性

を比較衡量して決めることが基本となります。

さらに、補完的に、
 ・借地契約についてのそれまでの経緯
(賃料の滞納の有無など地主の信頼を損なうような事情があったか、権利金・更新料などの支払いをしていたか、 これまで賃料が相場よりも低く押さえられていなかったか、など)
 ・土地の利用状況
(借地上の建物の老朽化の程度、周囲の土地でも高層ビルが建設されるなど土地の有効利用がされているか、など)
 ・地主から借地人への財産的な給付の有無・その金額の相当性(立ち退き料の額)
などを総合考慮して、決められます。

このとき、地主が土地を自己使用する必要があるというだけでは、通常は「正当の事由」ありとは認めらません。 これに加えて、相当額の立ち退き料の支払いがあってはじめて、「正当の事由」があると判断されるケースがほとんどです。

また、地主が土地を自己使用する必要性があまり高度とは言えないケースでは、 いくら立ち退き料を提供しても「正当の事由」がないと判断される場合すらあります。

ところで、地主と借家人の間で、土地の明け渡しに関する合意がまとまらない場合には、裁判所に申し立てて、「正当の事由」の有無の判断やいくらの立ち退き料の支払いがあれば「正当の事由」ありとして土地の明け渡しが認められるかを判断してもらうこともできます。

では、いくらならば立ち退き料として妥当な額と認められるでしょうか。

立ち退き料の額も、先ほどご説明した事情を総合的に考慮して決められます。

 ・地主が土地を自己使用する必要性がきわめて高い反面、借地人が土地を自己使用する必要性に乏しい、として立ち退き料がゼロとなるケース
 ・借地権の価格相当額を立ち退き料とするケース
 ・借地権価格の何割かを立ち退き料と認めるケース
 ・他の代替地の購入相当資金を立ち退き料と認めるケース

などさまざまです。

たとえば、借地人がその土地で長年にわたり事業を営んでおり、他に土地を所有していない場合には、借地人の土地の自己使用の必要性は高いと言えます。
これに対して、地主の事情としては、例えば、単に土地を有効利用して収益を上げたいとか、相続税の支払い、 物納に充てたいという程度では、自己使用の必要性が高いとは言えないと思われます。

したがって、このような場合、過去の裁判例に照らすと、借地権価格相当額(通常は更地価格の60%〜80%)の立ち退き料の支払いと引き換えでなければ、「正当の事由」がないとして、土地の明け渡しが認められないケースが多いと思われます。

ご相談の件につきましても、それなりの立ち退き料が支払われてしかるべきケースですので、専門の弁護士にご依頼されることをおすすめします。

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秋山 亘 弁護士 寄稿担当:秋山 亘 弁護士
所属:佐久間・秋山法律事務所
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このコンテンツは寄稿担当弁護士の責任のもと作成されたものです。弁護士ドットコムは内容の正確性、真実性等について責任を負いませんのでご了承下さい。
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