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第47回

内縁関係の立証について

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稲野 正明弁護士

稲野法律事務所

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  1. はじめに  内縁配偶者が交通事故関係で請求できること
      内縁の夫(妻)が交通事故の被害にあったとき,本人だけではなく内縁配偶者としても扶養相当分の損害を被ったとして,損害賠償請求ができます(注1)。
      逆に,加害者になって人損や物損事故を起こした場合,他方の内縁配偶者である内縁の夫(妻)がかけている自動車保険で保護され,賠償金を保険会社が払ってくれます(注2)。

  2. 内縁関係とは
       内縁とは,「婚姻の届出をしていないために,法律上の夫婦と認められないものの,婚姻の意思を持ち,社会的に事実上の夫婦共同体として婚姻状態にある関係をいう」とするのが親族法(家族法)の定義付けで定説です。
       内縁関係=事実上の婚姻関係(準婚姻関係)=(破綻していない婚姻関係?婚姻届)という感じで理解しておけば良いです。事実を尊重して,婚姻と同様の保護を内縁配偶者に与えるために親族法(家族法)における苦心と努力の成果として判例も認めるところになったものです。「内縁は婚約よりも緊密な関係である」点に注意が必要です。

  3. その立証
       ではその立証はどうするのか。
       提出を求められた資料を出せばいいといってしまえばそれまでなんですが(注3),「内縁関係」であることの証明に共通の資料みたいなものは何かを考えてみます。


   ではその資料は何かということですが,まず,立証とか証明とかというものは,証明するべき事実(立証テーマ)がまずあって,次にそれを証明するものを探すという手順で考えるべきものです。
   立証テーマ(主要事実)が漠然としているのであれば,それを分解するとか,構成する具体的な事実を挙げるとかして,ともかく,具体的にイメージできる事実を列挙します。

手順1 その人の実態に即した具体的事実を拾い上げる

  「具体的事実を拾い上げる」ためには,そもそも「内縁関係」とはどういう意味のことかを具体的に理解しておく必要があります。
内縁とは,(1)婚姻の意思を持ち,(2)社会的に事実上の夫婦共同体として婚姻状態にある関係ですが,(1)(2)は具体的にはどういうことなんでしょうか。
   一般論として考えてはダメです。
   その人の実態に即して考えないといけません。
   相談者との問答ふうに説明します。

相談者 ということで,内縁関係を立証する資料が必要で準備をしているんですが。ネットで見たら(1)(2)を具体的に示すものが証拠資料だと書いてあるんですが,その先が断片的にしか分からないんです。

弁護士  断片的にしか書かれていないのは,ケースバイケースだからで,仕方ないです。「婚姻届は出していないが夫婦であることには婚姻と変わりが無い」という実態が現実にある,ただその実態は,カップルによって様々である,ということなので,まず,実態を把握しないといけませんから。それに,離婚事件とか不貞損害賠償請求事件とかは,普通に弁護士をしていると割と経験するので,何か参考文献的なものが必要であるとか,そういうものがあるとかとは弁護士は発想しないんです。自然にやってますから。
  さて,ちょっとあなたの場合について考えて見ましょう。(1)(2)はあなたの場合はどういうことになるのでしょうね。いくつかお尋ねしますね。あなたは,相手の方といつどこでどうやって知り合って,いつころから同棲しているんですか。同棲するきっかけや動機は何だったのですか。住民票は同じなんですか。違っているとしたら理由は何ですか。婚姻届を出していない理由は何ですか。いつころ婚姻届を出す予定ですか。(あ,別に,出さないなら出さないで全く問題ないんですが,実態を整理するためですからね。矢継ぎ早に質問しないで欲しい?これは架空のお話しですから,そこをいうのはルール違反です。)家計は同一ですよね。違うなら理由はなんでしょうか。最初からずっと別会計ですか。役割分担があるのならそれでもいいですよ。例えば家賃はあっち持ち,水光熱費と食費はこっち持ちで,携帯とかはめいめいとか。それなりの家計簿(家計収支表)は作れますね。作れないとしたら,何故作れないのかの納得のいく説明がいるでしょうね。収入はどうなっていますか。持ち寄りですか?相手の収入で暮らしていますか?それぞれの家族や知り合いには,2人のことを知っている人がいますよね。肝心な人(親兄弟や自分の子など)が知らない,さらには,共通の知人もないということだと,単なる同棲ということになってしまいそうですが,なにか事情でもあるのでしょうか。昨日知り合って同棲してまだ1日目で他の人は誰も二人のことを知らない場合?そういうのは世間では夫婦同然と言わないでしょう。2人だけで結婚式は挙げている?「結婚式」の内容にもよるでしょうが,結論は変わらないでしょうね。
  住んでいる家は持ち家ですか借家ですか。誰の名義ですか。共同生活していることは誰が知っていますか。表札や郵便の宛先はどうなっていますか。間取りはどうなっていますか。どういう生活をしていますか。
  面倒なら,時系列的じゅうたん爆撃方式の質問というのがありますよ。月曜日の朝6時から翌週の同時刻まで,誰とどこでどうやって過ごしているのかのか書き出してみてください。 
  だいたいのところは聴き取ったように思います。夫婦はベッドと食卓をともにする関係だと比喩的に言われますので,経済的な裏付けを含めて,その現状ときっかけ,今後について具体的な事実を挙げておけば良いですよ。カップルの生活史(歴史)みたいなものや,「夫婦」ならばあってしかるべきエピソードや日常生活の断片とでもいいますか。2人の間の子がいて認知されている?そういう大事なことは最初に言ってくださいね,お願いしますよ。

手順2 具体的事実の痕跡を探す

 いま挙げた事実の痕跡です。誰も知らない,何も記録がないということはないはずです。家族や親類,友人,近隣住人の証言(とりあえずは一筆書いてもらう),写真(過去の出来事を撮影したもの),受け取った郵便物,家計収支表の裏付け(支出のうちレシート,公共料金に引き落とし通帳の写しなど),住民票(できれば双方の過去の分から)などです。ほかにもいろいろあるとは思いますが,まず事実を書いて(とりあえずは箇条書きでも可),要所要所で証拠というか痕跡みたいなものをくっつけて,とりあえず提出。後は提出先の質問に答えるとか,追加資料の提出を求められたら出す,出せないのなら出せない理由を十分に説明する,ということでよろしいんじゃないでしょうか。

手順3 とりあえず出して,提出先の追加要求や質問に真摯に誠実に対応する。

(手順4 弁護士に相談する(注4))



  1. 相続はできませんから,相続人が別にいる場合は,被害者本人の被った損害の配分が問題になります。加害者側としては,被害者本人の扶養を受けていた者がいることがはっきりしている場合は,扶養分は,相続人に対して支払わないで,実際に扶養されている者に支払う方が望ましいため,相続人・内縁配偶者間の話し合いがまとまるまで支払を見合わせるとか,供託をする場合もありえます。重婚的内縁関係の場合などは,交通事件とは全く別の次元の紛争になります。

  2. 被保険者(保険金の支払対象となる事故で損害を受ける者。ここで「損害」とは加害者として損害賠償金を支払うこと。要するにここでは,事故を起こして損害賠償金を支払うリスクを負っているが,保険でそのリスクがカバーされている者)として,保険約款で,(1)「記名被保険者」(保険証書に名前が記載されている者。普通は保険契約者)のほかに,(2) 記名被保険者の配偶者 ,(3) 記名被保険者またはその配偶者の同居の親族 ,(4) 記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子(婚姻歴のある者を含みません。)などが掲げられています。
        そして,「配偶者とは,法律上の婚姻の相手方をいい,原則として内縁を含みます。内縁とは,婚姻の届出をしていないために,法律上の夫婦と認められないものの,婚姻の意思を持ち,社会的に事実上の夫婦共同体として婚姻状態にある関係をいいます」と続いて定義されています(たぶん全保険に共通)。

  3. 各制度によって,どういう理由で内縁配偶者を婚姻の配偶者と同視するのかが微妙に異なってきますから(扶養手当,住居手当,遺族年金,パートナー休暇制度,関係解消の際の「財産分与」,賠償責任保険などなど),何を請求するのかによって,必要な証明資料も違ってきます。

  4. もちろん弁護士ドットコムも含みます。ここに書かれた様な内容を予め踏まえて整理して質問すれば,具体的な回答が期待できますよ。


このコンテンツは寄稿担当弁護士の責任のもと作成されたものです。弁護士ドットコムは内容の正確性、真実性等について責任を負いませんのでご了承下さい。

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稲野 正明弁護士

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