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弁護士法人アディーレ法律事務所代表弁護士の石丸幸人(いしまるゆきと)です。
近年,過払い金の返還請求に関し,多重債務者救済にむけた新たな司法判断が続出しています。過払い金の返還請求をする際の重要根拠となる取引履歴について,貸金業者へ開示義務を認めた2005年7月19日の最高裁判決や,グレーゾーン金利による貸付を例外的に有効とする「みなし弁済」の議論を,事実上否定した2006年1月13日の最高裁判決が代表的な例と言えるでしょう。
この流れを受けて,2007年11月13日,神戸地方裁判所で多重債務者救済への追い風となる,新たな判決が出されました。過払い金返還請求の法的根拠を,従来の「不当利得」ではなく,「不法行為」であるとしたのです。こうした判断が下されたのは,過払い金が発生するのは,貸金業者が借り手の無知に乗じて過剰な金員を収受したためであり,これは社会的相当性を欠く違法な行為である,とみなされたためです。不当利得の場合,返済が完了してから10年経過してしまうと,貸金業者に対して過払い金の返還請求が困難でした。しかし,不法行為の場合,被害を知った時点で時効が進行するため,過払い金の存在を知ってから3年以内であれば,請求が行えることになります。
この判決は大きな前進と言えますが,問題点が無いわけではありません。前述の通り,過払い金請求には取引履歴が必要です。そして,業者には開示義務があると最高裁が判決を下しています。ですがもし,この履歴が存在しなかったらどうでしょう? 実際,大手の業者でも「返済を受けた分の記録はあっても,貸した分の記録は残っていない」というケース,事務処理上「10年以上前のものは保存していない」というケースなどがあります。もちろん,実際に廃棄してしまっているのか,一種の「作戦」としてそう主張しているのか,本当のところは分かりません。ですが取引履歴が無いと言われれば,請求そのものが行えないことは動かしがたい事実です。
過払い金の返還請求を行うために,過払いという「不法行為」を強いた側からの証明が必要であるかぎり,この問題は解決しません。もちろん,記録がなければ請求側の主張をすべて認める,というのではあまりにも極端ですが,請求者に請求根拠を証明する義務が課される現行の手続きは,何らかの形で修正されるべきでしょう。多重債務者救済のムーブメントは確実に進行していますが,今後さらに前進して欲しいものです。
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寄稿担当:石丸 幸人 弁護士
所属:弁護士法人アディーレ法律事務所
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このコンテンツは寄稿担当弁護士の責任のもと作成されたものです。弁護士ドットコムは内容の正確性、真実性等について責任を負いませんのでご了承下さい。
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