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このコーナーは、法律問題について、初歩的なご説明をするというものです。 そして、私は、「債務整理」や「クレジット・サラ金問題」について、数回にわたりお話しすることになっています。
今回は、時効(消滅時効)について、ご説明しましょう。
1. 原則
一般的に、債権は、一定期間権利を行使しないと消滅するとされています。このことを「消滅時効にかかる」と言います。
サラ金業者の債務者に対する貸付金の場合、商行為によって発生した債権(商事債権)ですので、5年で消滅時効にかかります(商法522条)。
ですから、何らかの理由(例えば、夜逃げしていて債権者から請求を受けなかった等)で、5年間、支払をしなかった場合、債務者が消滅時効を援用することによって、債務が消滅します。「時効を援用する」というのは、「時効を主張して、自分の利益になるようにする」ことで、時効期間が経過していても、この「援用」をしなければ、時効による効果を受けられません。
消滅時効
5年間というのはアッという間です。私に法律相談をしにこられた方の中にも、平成13年2月以降返済していないなどというケースがあります。その場合には、消滅時効を援用するという内容証明郵便を債権者に送れば、債務が消滅し、一件落着となります。
2. 承認
ところで、時効期間中に債務を承認してしまうと、消滅時効は中断してしまいます(民法147条3号)。
「消滅時効が中断」するというのは、たとえば、平成18年1月1日に借金をした場合、5年間支払いをしなければ、平成23年1月1日に消滅時効が成立し、援用すれば債務が消滅しますが、平成22年10月1日に自分の借金を認めてしまうと、平成23年1月1日に消滅時効が成立するわけではなく、消滅時効の成立は、平成27年10月1日となってしまうということです。
消滅時効が中断する場合
なぜこのようになるかというと、債務者が自ら債務の存在を認めてしまった以上は、消滅時効を中断させる効果を認めてもいいと考えられているからです。
そして、時効完成後であっても、債務者が債務を承認してしまうと、 時効の援用ができないという最高裁判例(最高裁昭和41年4月20日判決)があります。
その判決の具体的な内容は、
| 債務者が自己の負担する債務について消滅時効が完成した後に、債権者に対し債務を承認した場合、債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えられるから、信義則に照らし、債務者が時効の援用をすることは許されない |
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というものです。
「信義則」とは簡単に説明すると、いったん相手に信頼させた以上は、あとでそれと矛盾する行為をして、相手の信頼を裏切ってはならない、というような意味です。つまり、この最高裁判例は、債務者は、時効完成後であるにもかかわらず、いったんは債務を承認して支払う意思を示したのだから、あとになってから、それと矛盾する行為である、時効の援用をして、債務を消滅させることは、「支払ってもらえるだろう」という債権者の信頼を裏切ることになるので認められないよ、と言っているのです。
消滅時効が援用できない場合
この判例があるので、時効完成後であっても、少しでも(例えば5000円など)払わせて、債務を承認させて、時効の援用をさせないようにしようという業者がいます。
では、時効完成後、少しでも返済をしてしまったら、一切時効の主張ができない のでしょうか?
それに対する回答をする前に、下記の福岡地裁の判決を紹介します。
ある貸し金業者は、昭和58年、Aさんに対し、40万円を貸し付けました。
Aさんは、ほぼ毎月支払を続けていましたが、3年後消息不明になりました。
Aさんが最後に支払をした日から約16年後、貸し金業者は、Aさんの所在を知り、残元金及び遅延損害金の合計約166万円を請求する旨の通知をしました。これに対し、Aさんは、元金だけの分割払いにしてくれるよう求めたところ、貸し金業者の従業員から、いくらかでも支払ったら上司と話をするとの回答があったため、貸し金業者に対し、5000円を振り込んで支払いました。 |
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このような事案で、貸し金業者がAさんに対して、貸金返還請求をしたのです。
前述した最高裁の判例からすると、Aさんは時効完成後に債務を承認しているので、時効の援用ができないようにも思えます。しかし、福岡地裁での平成14年9月9日の判決は、
| 1. | Aさんが貸し金業者に5000円を支払った経緯、また、その支払いが1回に留まっている | | 2. | 支払額5000円が当時の本件貸金債務の元金、遅延損害金の合計額に占める割合が著しく小さい |
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・・・などを考慮し、Aさんの支払が債務の全体を支払う意思があって、債務を承認したものと解することはできない、としました。
また、同判決は、
| 1. | 債務の承認に当たるか否かにかかわらず、貸し金業者側に時効中断のための適法な権利行使をする手段はなかったため、Aさんが5000円を支払ったことにより貸し金業者側に生じたという信頼の内容や程度には限界があった | | 2. | Aさんが消滅時効の完成を知らないままに行動しており、貸し金業者もそのことは十分認識できた | | 3. | 貸し金業者従業員は、債務が消滅時効期間を経過したことを知りながらAさんと交渉を行っており、Aさんに一部弁済を求めたのもAさんからの消滅時効の主張を阻止するためであったと認められる | | 4. | Aさんが弁済をした日から本件貸金の請求をするまで約16年も経過している |
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・・・などの事情を考慮して、Aさんの行為は、信義則上、貸し金業者に消滅時効の援用権を喪失させる事情にあたらない、と判断しました。
つまり、このような事情がある場合には、貸し金業者の「支払ってもらえるだろう」という信頼は保護に値しないと結論づけられたのです。
このような判決もありますので、時効完成後につい支払ってしまった場合でも、必ずしも消滅時効を援用できないとは限りません。諦めてしまわずに、弁護士に相談することをお勧めします。
3. 過払金の時効
これに対して、債務者のサラ金業者に対する過払金債権は一般的な債権ですので、10年で消滅時効にかかります(民法167条)。
ですから、過払金に関しては、原則として、最終の支払日から、10年以内に請求する必要があります。現在、平成18年ですので、、平成8年頃以降に完済した取引については、過払金が発生していて、取り戻すことが可能という場合があります。ですから、身に覚えのある方は、直ちに弁護士に相談してください。もちろん、平成9年に完済した、平成13年に完済した、去年完済したという事案でも良いのです。
さらに、昭和60年に借り入れて、平成元年に完済し、その後、平成9年に再度借り入れし、平成12年に完済したというような事案でも構いません。要するに、間に10年なければいいのです。
過払い金の消滅時効
5年は短いですが、10年はそれほど短くありません。ですから、債務を抱えている方、過去に抱えていた方、もう随分前に完済してしまった方は、是非、弁護士に相談してみてください。過払金を取り戻せるるかもしれません。
4. 発展
ここからは発展的なお話ですが、過払い金が発生した後に、10年以上経ってから新たに借入をした場合でも、前記の最高裁判例の趣旨からすれば、サラ金業者が債務を承認したから時効を援用できないと言うこともできるかもしれません。過払金が生じているのに、債務者に新たな貸付をすることは、過払金の返済と同視でき、債務(過払金返還債務)の承認にあたると言いうるということです。このような判例の存在は、下級審でも確認できていません。しかし、必ずしもムリではないという気がするのです。
債務者とサラ金との間の訴訟について、近時の裁判所(特に最高裁)は、どういうわけか、非常に債務者寄りです。これはとてもいいことです。地裁の方が最高裁より多少保守的で、高裁はさらに保守的という印象(あくまでも印象です)を受けます。
裁判は、やってみなければ分からないという面があります。画期的な判決だって、多くの人が諦めるところを諦めなかった人と代理人の弁護士が作っているのです。ですから、悩みがあったら諦めてしまわずに、とりあえず弁護士にご相談下さい。また、弁護士によっても、色々な見解がありますので、自分に合った弁護士を見付けることが重要です。
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寄稿担当:岡林 俊夫 弁護士
所属:岡林法律事務所
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このコンテンツは寄稿担当弁護士の責任のもと作成されたものです。弁護士ドットコムは内容の正確性、真実性等について責任を負いませんのでご了承下さい。
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