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二次創作の女体化キャラ「クッパ姫」が人気爆発、著作権問題を考察
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二次創作の女体化キャラ「クッパ姫」が人気爆発、著作権問題を考察

スーパーマリオシリーズに登場するキャラクター「クッパ」が変身したという設定の二次創作キャラクター「クッパ姫」が大きな話題になり、SNSなどで続々とイラストが投稿されています。

「クッパ姫」は、9月14日に発表されたニンテンドースイッチ用ゲーム「New スーパーマリオブラザーズ U デラックス」において、キノピコ(同ゲームのキャラクター)が新アイテムの「スーパークラウン」を取ると、ピーチ姫(同ゲームのキャラクター)によく似た「キノピーチ」に変身するシーンを参考にし、マレーシア在住だというhaniwaさんが、ピーチ姫によく似たクッパを制作しました。

「クッパ姫」は金髪に青い目、青いイヤリングとブローチなど、ピーチ姫に共通した特徴と、2本の角と、トゲ付きのブレスレット、首輪、甲羅など、クッパに共通した特徴を合わせ持っていて、haniwaさんの投稿以降、SNSでは次々に二次創作イラストが公開されています。

さらに、ネットの署名サイト「change.org」では、二次創作をやりやすくするため、任天堂にクッパ姫を公式キャラ化することを求める署名活動も始まり、続々と署名が集まっています。

既存のキャラクターを組み合わせたキャラクターを勝手に制作・公開することは、著作権法上、どんな問題があるのでしょうか。齋藤理央弁護士に聞きました。

●クッパとの関係、ピーチ姫との関係を考察

まず、キャラクターの著作権については、法的にどう位置付けられているのでしょうか。

「裁判所は、登場人物、いわゆる抽象的な『キャラクター』をもって著作物ということはできないと判示しています(ポパイキャラクター事件上告審)。つまり、クッパがピーチ姫に変身したという設定があっても、それだけではクッパやピーチ姫の著作権を侵害することにはなりません。

ただし、登場人物(キャラクター)が描かれたそれぞれのイラストは著作権の対象となります。つまり、個別のクッパやピーチ姫のイラストの著作権を侵害しないかが問題とされることになります」

では、クッパ姫についてはどう考えればいいのでしょうか。

「クッパとの関係では、クッパ姫が著作権を侵害する可能性はないと思います。見た目の特徴がクッパを描いたとは思えないからです。

ピーチ姫については、クッパ姫は太くてつり上がった眉毛や、側頭部から生えた角、3つに分かれた前髪、犬歯、勝気な表情、黒いドレス、腕輪や首輪、甲羅を背負っていることなどピーチ姫のイラストと相違する要素が多く、この相違点がクッパ姫のイラスト固有の魅力を生み出している反面、優雅な表情やピンク色のドレスやアクセサリーの色合いが出す華やかな感じや、細い眉毛や口紅などの女性的な可愛らしさと言ったピーチ姫のイラストの表現上の本質的特徴は消しているようにも感じます。したがって、単純な人のイラストとして対比してみたときは、著作権を侵害しないとも考えられます。

しかし、先ほど紹介したポパイキャラクター事件によれば、ある登場人物のイラストについて、複製というには登場人物の絵と細部まで一致する必要はなく、その特徴から当該登場人物を描いたものであることを知り得るものであれば足りるとされています。

また、ポパイキャラクター事件では絵だけではなく、絵の上下にキャラクターの名前が文字で表記されていることも考慮要素とされています。

単純な人のイラストについて表情などの違いも考慮したマンション読本事件等と比較すれば相当に緩やかな基準で考慮要素も広いといえます。

もしこの基準を踏襲できるのであれば、クッパ姫については、金髪に碧眼、髪型(ただしスポーツゲームのときの髪型)、ドレスの特徴的なデザインやアクセサリーがピーチ姫と同じというところから、ピーチ姫をモデルにしていると知り得るとも言うことができます。

さらに、クッパ姫周囲の事情も考慮できるのであれば、最後のコマだけを一つのイラストと捉えても、横にマリオがいることや、さらにその後ろには衣服からピーチ姫と知り得る人物が呆れた表情で描かれていることなどを加えると、ピーチ姫をモデルにした人物であると知り得るでしょう。

そうすると、著作権(翻案権)侵害と評価し得ることになります」

SNSでは、このクッパ姫をもとにしたイラストが続々と投稿されていますが、これらのイラストの著作権問題はどうなるのでしょうか。

「クッパ姫の二次創作については、先ほど述べたクッパ姫のイラストの特徴を引き継いでいるイラストを描いた場合、クッパ姫を描いたものであると知り得るものとして著作権(複製権・翻案権)侵害となる可能性が高いでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

齋藤 理央
齋藤 理央(さいとう りお)弁護士 今井関口法律事務所
今井関口法律事務所。著作権などコンテンツiP(知的財産)やITトラブルなど情報法分野に重点をおいている。重点分野で最高裁判決、知財高裁判決などの担当案件の他、講演、書籍や論文執筆監修など多数。自身のウェブサイトでも活発に情報発信をしている。東京弁護士会所属。著作権法学会、日本知財学会会員、弁護士知財ネット、東弁IT法研究部等に所属。

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