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岡口裁判官の分限裁判「実質一審制」なのに非公開 最高裁、メディアの傍聴希望退ける
岡口裁判官

岡口裁判官の分限裁判「実質一審制」なのに非公開 最高裁、メディアの傍聴希望退ける

東京高裁民事部の岡口基一裁判官(52)が、ツイッターの投稿を問題視され、裁判官の懲戒を判断する「分限裁判」にかけられている問題では、識者から非公開であることを問題視する声もあがっている。

弁護士ドットコムニュースは、9月11日の審問の傍聴希望を出したが、最高裁大法廷に却下された。ほかのメディアも傍聴できなかったという。

審問後、司法記者クラブであった会見で、産経新聞の記者に審問の非公開について意見を求められた岡口裁判官は、次のように語った。

「当初は当事者に配慮して、分限裁判については明らかにしない意向だったが、東京高裁が記者に喋った。だから、今のような状況になっている。それなのに、裁判は非公開。非常に不公平だ。憲法の裁判公開原則に照らしてもおかしい」

●「裁判所が申し立て、裁判所が判断」「実質一審制で不服申立できない」

分限裁判は、民事事件のうち「非訟事件」に分類される。非訟事件手続法30条は「非訟事件の手続は、公開しない」としたうえで、「ただし、裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる」と続く。

弁護士ドットコムニュースは、岡口裁判官が(1)ブログで分限裁判の記録を公開していることから国民の関心が高いこと、(2)懲戒となれば、事実上のツイッター使用停止命令で表現の自由にかかわること、などを理由に公開の必要があると主張した。

しかし、最高裁からは理由を伝えられることなく、「職権発動はしない」と退けられた。

岡口裁判官(左)と野間啓弁護士

岡口裁判官は、懲戒の申立人が東京高裁長官(林道晴氏)で最高裁大法廷が判断することから、「当局が訴えて、当局が判断する」ことの危険性を指摘する。

さらに、最高裁大法廷が判断するため、実質一審制で決定に異議を申し立てられないとして、「その手続きで良かったか悪かったか検証できない」とも語った。

代理人の野間啓弁護士は、分限裁判の非公開について、「裁判所は裁判官をベールに包ませることに価値を感じているということ。だからこそツイッターで発信することが気にくわない」と共通点を指摘した。

●公開は過去の裁判でも問題視された

分限裁判については、仙台地裁の裁判官が同高裁の分限裁判で懲戒処分(戒告)を受け、即時抗告(不服申し立て)した、「寺西裁判官事件」の最高裁大法廷決定(1998年12月1日)が有名だ。

同決定では、「分限事件については憲法82条1項(裁判公開の原則)の適用はないものというべきである」と述べられている。分限裁判は「適正さに十分に配慮した特別の立法的手当」があるので、公開しなくても手続保障に欠けるとはいえず、公開はあくまで裁判所の裁量だという。

この決定には、尾崎行信裁判官(当時)らが、岡口裁判官の主張するポイントなどを指摘しながら、公開裁判にすべきとする反対意見を出している。

ジャーナリストや法学者らでつくる「司法情報公開研究会」の共同代表で、青山学院大学教授の塚原英治弁護士は、「分限裁判については、尾崎反対意見が委曲を尽くしている」として、「不服申立の手続が別にない以上、手続を公開するのが妥当だと思います」と話した。(編集部・池田宏之、園田昌也)

(弁護士ドットコムニュース)

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