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女児死亡のブロック塀、高槻市「建築基準法に適合せず」…ルールはどうなっている?
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女児死亡のブロック塀、高槻市「建築基準法に適合せず」…ルールはどうなっている?

大阪府北部を震源とする大きな地震が6月18日朝、発生した。震度6弱を観測した高槻市では、市立小学校のブロック塀が道路側にたおれて、通学中の9歳女児が亡くなった。このブロック塀をめぐっては「建築基準法違反のおそれ」が指摘されていたが、高槻市は18日夜、「建築基準法と適合しない」と発表した。そもそも、ブロック塀の基準はどうなっているのだろうか。

●専門家から「法令違反」の可能性が指摘されている

高槻市によると、地震によって倒壊したのは、市立寿栄(じゅえい)小学校のプールを囲むブロック塀だ。高さ3.5メートルのうち、コンクリートのブロック8段で組まれた1.6メートル上段部分(基礎部分は1.9メートル)が、約40メートルにわたって通路側にたおれたという。

この倒壊について、NHKは同日午後、東北工業大学の最知正芳教授の次のようなコメントを紹介している。

「プールの基礎部分を地面と見なすことで、ブロック塀の高さは法令的に問題無いという考え方もあるかもしれないが、その下を子どもたちが通ることを考えれば、安全サイドに立って、道路からの高さで考えるべきだ」

「映像を見る限りでは、倒壊を防ぐために基礎と塀を固定する『控壁』も設置されていないように見える。倒れ方を見ると、基礎の部分とも十分に接着されていない可能性もあり、建築基準法の施行令で定められた作り方で設置されていない可能性がある」

・倒壊のブロック塀「通学路から非常に高く危険」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180618/k10011483521000.html

高槻市は6月18日夜、「当該塀は、建築基準法と適合しないが、設置当時、どのような経緯で仕様が決定されたかは不明である」と公表。弁護士ドットコムニュース編集部が電話取材したところ、どの部分が「適合しない」のか、詳しい説明は得られなかった。報道によると、ブロック塀の高さが基準を超えており、塀を固定する構造もなかったという。

●建築基準法施行令でルールが定められている

ブロック塀に関しては、建築基準法施行令(62条の8)で、高さ(2.2メートル以下)、厚さ(15センチ以上)、鉄筋(太さや間隔)、控壁(補助する壁)の設置、ブロック塀の基礎の根入れの深さ(30センチ以上)といった基準が定められている。

国土交通省によると、この基準はもともと、1968年の十勝沖地震の被害がきっかけで、建築基準法施行令が改正されて、つくられた(1971年施行)。さらに、宮城県沖地震(1978年)を受けて、ブロック塀の高さを「2.2メートル以下」とする大きな改正があったという(1981年施行)。

また、2001年には、ブロック塀の高さが「2.2メートルを超える」場合でも、「構造計算で安全性を確認できれば建築することができる」というふうに変更された。それ以降は、ブロック塀に関するルールは変わっていない。

●ブロック塀がつくられた時期は「すぐに回答できない」(高槻市)

また、建築基準法施行令の違反にあたるかどうかは、ブロック塀がつくられた時期もポイントになる。

ブロック塀にかかわらず、建築物はどうしても、適法につくられたけども、法令が改正されて「不適格」になるという状況が生じるうる。「既存不適格建築物」と呼ばれており、建築時の基準で違法につくられた「違法建築物」と区別されている。

寿栄小学校のホームページによると、同校は1974年4月に開校し、同年9月に新校舎に移転している。ただ、プールやブロック塀がつくられた時期については記されていない。高槻市営業広報室は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「(ブロック塀がつくられた時期は)すぐに回答できない」としている。

●ブロック塀の倒壊はこれまでも問題になっている

地震によるブロック塀の倒壊は、これまでも問題になっている。熊本地震(2016年)では、20代男性が、約4メートルの高さから落ちてきたブロック塀の下敷きとなって、亡くなった。男性の遺族は、ブロック塀の所有者に対して、損害賠償を求める訴訟を起こしている。

国土交通省によると、「既存不適格」のブロック塀の数が、全国にどれくらいあるかは把握されていない。また、今回のブロック塀が、建築基準法施行令に違反していたものだったかどうかは、建物を所管している高槻市が調査することになるという。

(弁護士ドットコムニュース)

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