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楽天で買ったのに「アマゾン」から届く…無在庫・タダ乗り「直送転売屋」、対策強化へ
伝票には「ギフト(贈物)」の表記。自分自身にギフトを送ったことになっていた

楽天で買ったのに「アマゾン」から届く…無在庫・タダ乗り「直送転売屋」、対策強化へ

楽天市場やヤフーショッピングなどで、Amazonを利用した「直送転売屋」あるいは「無在庫転売屋」などと呼ばれる業者の出店が相次ぎ、各ネットモールが契約解除など、対策を強化している。

「直送転売」とは、仕入れをしていないのに、商品があるかのように見せかけて出店し、注文のたびに、ほかのネットショップで商品を購入するというもの。通常はAmazonが利用され、商品が「ギフト」として送られてくるのが特徴だ。

価格を比較しないユーザーや、ポイント目当てのユーザーを対象に、Amazonより高い価格で販売し、その差額で利益をあげているとみられる。中には、実際にはかかっていない送料を徴収する業者もあるようだ。

ネットでは数年前から、「楽天やヤフーで買ったのにAmazonから届いた」という書き込みが増えており、通販新聞が今年2月16日に報道したことで話題になった。在庫リスクを抱えない手法やAmazonの倉庫・梱包・発送機能にタダ乗りしている点、利用者の了解なしに個人情報を引き渡していることなどに批判が集まっている。

●弁護士ドットコムニュースも注文してみた

各モールのレビューページには、「商品がAmazonから届いて驚いた」といった投稿が数多く寄せられている。弁護士ドットコムニュース編集部は、レビューを頼りに直送転売屋と思しきショップを発見。実際に注文してみた。

そのサイトでは、CDやおもちゃ、カー用品、PCサプライ、健康用品など多彩な商品が扱われている。商品は全部でおよそ12万種類。この中から、「配送がAmazonだった」とのレビューがあった約1500円の商品を注文した。価格はAmazonより500円ほど高い。送料は無料で、最短当日というスピードが強調されていた。

商品を受け取ったのは翌日の夜。楽天市場で注文したのに、箱には「Amazon」の文字。伝票には「このお届けものはギフト(贈物)です」と書かれていた。送り主の欄には、なぜか注文した本人の名前が…。ショップの名前はどこにも見当たらない。Amazonの処理上は、「自分にギフトを贈った」わけの分からない客ということになっているようだ。

●Amazon使ってるんだから、速いのは当たり前…

Amazonの箱で届くものすべてが「直送転売」というわけではない。Amazonが提供する「FBAマルチチャネルサービス」があるからだ。ネットショップ事業者がAmazonに在庫を預けておくと、梱包・発送などをしてもらえるうえ、楽天やヤフーといったAmazon外への出店にも対応しているサービスだ。

しかし、このサービスは「ギフト」に対応していない。しかも、事業者はAmazonのロゴが入った箱ではなく、無地のものを選ぶこともできる(未対応の地域もある)。

すべての商品がそうかは分からないが、この業者が「無在庫」で商売していることは間違いなさそうだ。サイトに「現在ラッピングは行っておりません」とあったが、できるわけがない。業者はAmazonの箱どころか、商品にすら触れたことがないのだから。配送が速いのも、無料なのも当たり前だ。やっているのはAmazonなんだから…。

●「直送転売」は法的に問題か?

ところが、消費者問題にくわしい岡田崇弁護士によると、「直送転売」は違法とは言い難いようだ。Amazonから直送しているので、法的には「転売」とは言えず、チケット転売などで争点になる、古物営業法にも抵触しないそうだ。

在庫がないのにあるように見せかけていることや、実際にはかかっていない送料を求めた場合でも、詐欺罪などに問うのは難しいという。「ただし、倫理やショッピングモールの信頼性という意味では、明らかに問題。モールの利用規約などで対応すべきでしょう」(岡田弁護士)

●楽天やヤフーはどうしているか?

各企業の対応はどうなっているのだろうか。楽天は、利用者の同意を得ずに、氏名や住所などの個人情報を他社に送っている点を問題視。確認が取れ次第、契約解除などの措置をとっているという。

また、「楽天で買ったのに、Amazonで届いた」という問い合わせが増えたことから、今年2月2日には出店者向けのガイドラインを改訂。FBAマルチチャネルを使う「正規」の事業者に対し、箱の伝票や納品書などに「楽天市場」であることを明記することや、可能な限り「無地」の箱で送るよう求めている。5月以降、対応を取らなかった店舗に対し、違反点数を加算することも検討するという。

ヤフオクやヤフーショッピングを運営するヤフーでも、同様の問題が確認されている。ヤフーも、無在庫販売などを禁止しているガイドラインや利用規約に抵触する行為として、取り締まりを強化。パトロールを行い、確認が取れ次第、強制休店や契約解除などにしている。

モール側も、ユーザーの利便性やモールの健全性、ほかの出店者の保護といった観点から、対策をとっているようだ。直送転売屋を規制しなければ、「Amazonで買った方が安い」というイメージもつきかねない。

それでは、ユーザーはだまされないためにどうすべきだろうか。ヤフー広報は、「購入の前に、ストアの評価や商品評価(ユーザーレビュー)の確認をしていただくことなどが考えられます」と注意を喚起している。

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