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女子アナ「不倫写真」を掲載した「フライデー」はリベンジポルノ防止法に違反する?
「フライデー」(9月18日号)

女子アナ「不倫写真」を掲載した「フライデー」はリベンジポルノ防止法に違反する?

人気女子アナウンサーの「不倫写真」として、週刊誌『フライデー』(講談社)に掲載された写真が話題になっている。不倫相手とされる男性と初詣に行ったときの写真や、部屋で2人がキスしたり、全裸で性行為をしている写真が掲載されている。

女性の目や鼻、耳はモザイクで覆われているものの、口元は露わだ。写真について説明する記事には、具体的な氏名は書かれていないが、「日本を代表するテレビ局の看板番組でキャスターを務めている」「学生時代に芸能活動を始め、大学ではミスキャンパスにも輝いた」などの情報が記されている。

今回のような写真はモザイクがかかっているとはいえ、公開された画像やプロフィール情報などから、ある程度、身元が絞り込まれるおそれがある。実際、ネット上では女子アナを「特定」しようとする動きもあった。

プライベート写真の流出といえば、元恋人が別れた腹いせに性的な写真や動画を公開する「リベンジポルノ」という言葉がある。今回の流出の経緯は明らかにされていないが、このような写真を掲載した場合、「リベンジポルノ防止法違反」にあたるのではないかという指摘もある。はたして、その点はどうなのか。秋山亘弁護士に聞いた。

●「私事性的画像記録物」にあたることは明らか

「リベンジポルノ防止法の正式名称は、『私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律』といいます。

その目的は、『私事性的画像記録の提供等により私生活の平穏を侵害する行為を処罰すること』と規定されています(同法1条)」

ここでいう私事性的画像記録物とは、どんなものなのだろうか。

「アダルトビデオの撮影目的など、第三者が閲覧することを認識したうえで任意に撮影された画像をのぞく

(1)性交または性交類似行為に係る人の姿態

(2)他人が人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう)を触る行為または人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させまたは刺激するもの

(3)衣服の全部または一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等もしくはその周辺部、臀部又は胸部をいう)が露出されまたは強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させまたは刺激するもの

と定義されています(同法2条)。

そして、『第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、私事性的画像記録物を不特定もしくは多数の者に提供し、または公然と陳列した』場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金になります(同法3条)」

今回の写真が流出した経緯は明らかになっていないが、いわゆる「リベンジポルノ」にあたるのだろうか。

「この法律が制定されたきっかけとなったのは、男女関係のもつれによる『報復目的』(リベンジ)による性的な画像の公表を処罰することでした。しかし、実際の法律においては『報復目的』は犯罪の構成要件になっていません。

したがって、私事性的画像記録物を第三者が撮影対象者を特定できる方法で公表し、そのことについて故意が認められれば、犯罪として成立します。

今回の週刊誌に掲載された画像には、全裸で性行為をおこなっている男女の写真も含まれています。『私事性的画像記録物』に該当することが明らかです」

●「リベンジポルノ防止法違反」に問われる可能性

写真を掲載した出版社は、この法律に触れるということなのだろうか。

「問題は、このような私事性的画像を『第三者が撮影対象者を特定することができる方法』で公表・陳列したと言えるかという点にあります。

今回の週刊誌の画像を見ると、女性アナウンサーのアップの顔写真には、目線にモザイクの目隠しがされております。

しかし、当該記事では、女性アナウンサーが出演している番組の特徴などに関する情報がいくつか記載されているため、それだけで女性アナウンサーの数が絞られます。

そのうえ、目線に目隠しをしただけでは、髪型や顔の輪郭、歯の形などによって十分特定できてしまいます。実際にインターネットでは、顔画像の一致機能などによって当該人物が誰なのか特定しようとする動きがあり、そのような情報が拡散してしまっているようです。

したがって、今回の週刊誌の私事性的画像については『第三者が撮影対象者を特定することができる方法』で公表・陳列されたといえると考えられます」

刑事責任を問うためには「故意」が必要になるが、その点からはどうだろうか。

「顔写真に目隠しをしたことをもって、『第三者が撮影対象者を特定することができる方法』に関する『故意』が認められるのかどうかという問題はありますね。

しかし、さきほど述べたように、女性アナウンサーの特徴や目隠し以外の輪郭、歯の形、髪型などの特徴によって、特定されてしまう可能性が十分にあることを知りながら公表したというのであれば、『特定されてもかまわない』という『未必の故意』が認められる可能性はあると思われます。

したがって、今回の週刊誌の私事性的画像の公表については、『リベンジポルノ防止法違反』の刑事責任が問われる可能性は十分にあると言えます。ただし、同法違反の罪は、親告罪ですので、実際の被害者が刑事告訴をすることが必要になります」

秋山弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

秋山 亘
秋山 亘(あきやま とおる)弁護士 三羽総合法律事務所
民事事件全般(企業法務、不動産事件、労働問題、各種損害賠償請求事件等)及び刑事事件を中心に業務を行っている。日弁連人権擁護委員会第5部会(精神的自由)委員、日弁連報道と人権に関する調査・研究特別部会員

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