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LINEの「トーク」を運営会社は監視できない?憲法が保障する「通信の秘密」の意味
LINEは世界10ヶ国で利用されており、ユーザー数は4億以上という。

LINEの「トーク」を運営会社は監視できない?憲法が保障する「通信の秘密」の意味

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メッセージアプリ「LINE」の個人アカウントが、何者かに乗っ取られる騒動が多発している。被害にあったユーザーになりすまして、プリペイドカードの購入を知人たちに依頼するケースが相次いでいるが、ある「悪ふざけ」を機に思わぬ事態が発生した。

ネットニュースサイト「netgeek」の編集部員が、なりすましを装って、友人にプリペイドカードの購入を催促するメッセージを送ったところ、突然アカウントが凍結されてしまったというのだ。ネットでは、LINEが「トーク」と呼ばれるユーザー間のメッセージのやりとりをチェックしているのではないか、という疑問の声が上がった。

netgeekによると、LINEから説明のメールが来たという。その説明では、「トーク履歴は見ていない」と明言。「法律においても、『通信の秘密の保護』が明記されており、トーク内でのやり取りを確認することはできません」と回答していたそうだ。

アカウントの乗っ取りが続発する中、どんな場合でも、事業者は「トークの中身」を見ることが許されないのだろうか。IT関連の法律問題にくわしい伊藤雅浩弁護士に聞いた。

●LINEの「競合サービス」が炎上した事例も

「通信の秘密は、憲法で保障されていますが、電気通信事業法4条で具体的に、『電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない』と定められています。

LINEのトークの中身は、『通信の秘密』によって保護されるものですから、たとえ運営者であっても、ユーザーに無断で中身を見ることはできません。これに違反すれば、刑事罰もあります」

法律で定められた「通信の秘密」がある以上、無断で見ることはできないというわけだ。

「2年前、LINEと競合関係にあるメッセージサービスが始まったとき、その運営会社の利用規約には、ユーザーがやり取りする情報は運営者が無償で利用することができる、という規定があり、『通信の秘密の侵害ではないか』とネットで炎上しました。そのときは、当日中に規約が修正されました」

 

なるほど、非常に重要なことであることは分かった。では、どんな場合でも、中身を見ることはできないのだろうか。

●裁判官の令状があれば、警察は複製や差し押さえが可能

「そうではありません。たとえば、児童ポルノ画像へのアクセスをブロックする行為は、通信の秘密との関係が問題になりますが、緊急避難にあたり、犯罪にならないとも考えられています。

しかし、アカウントが乗っ取られたかどうかということを検知するために、ユーザーのトークを監視する行為にまで、拡大することはできません」

刑事事件になってしまった場合は、どうなるのだろうか。

「具体的な犯罪の捜査に必要な場合、警察は裁判官の発する令状を得て、トークの内容を複製したり、差し押さえたりすることができます。

また、平成24年の刑事訴訟法改正によって、差し押さえが必要かどうかわからない段階でも、事業者に対して、一定期間、通信秘密(通信内容は含まない)等を保全しておくよう求めることもできるようになりました」

このように伊藤弁護士は説明していた。刑事事件になるかどうかで、状況が変わることになるようだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

伊藤 雅浩
伊藤 雅浩(いとう まさひろ)弁護士 シティライツ法律事務所
工学修士(情報工学専攻)。アクセンチュア等の約8年間コンサルティング会社勤務を経て2008年弁護士登録。システム開発、ネットサービス等のIT関連法務を主に取り扱っている。経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」研究会メンバー。

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