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DHC会長「8億円問題」めぐる名誉毀損訴訟でまた敗訴、ブログ記事に「違法性なし」
記者会見に臨んだ澤藤統一郎弁護士

DHC会長「8億円問題」めぐる名誉毀損訴訟でまた敗訴、ブログ記事に「違法性なし」

みんなの党(解党)の渡辺喜美・元代表が、化粧品大手DHCの吉田嘉明会長から8億円を借り入れていたことが2014年春に発覚し、大きな騒動になった。そのころ、この問題を取り上げたブログ記事で名誉を傷つけられたとして、DHCと吉田嘉明会長が、ブログを書いた澤藤統一郎弁護士に対して、6000万円の損害賠償を求めていた。しかし、東京地裁(阪本勝裁判長)は9月2日、ブログの内容に「違法性はない」として、原告である吉田会長らの請求を棄却し、訴訟費用を原告負担とする判決を下した。

勝訴判決を受けて、被告の澤藤弁護士が東京・霞が関の司法クラブで記者会見し、「これは言論への萎縮効果を狙って起こした裁判だ」「ありあまった金で訴訟を乱発することが許されて良いのか。腹が煮えくりかえる思いだ」と話した。

DHCの広報は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「判決に不服があるので、控訴する」とコメントした。

●「意見・論評としての域を逸脱していない」

裁判で争点となっていたのは、澤藤弁護士が2014年3月〜8月にかけてブログ「澤藤統一郎の憲法日記」にアップした複数の記事。

東京地裁は、これらの記事はいずれも、吉田会長が発表した手記などをもとに書いた「意見・論評」であると認定。吉田会長らの社会的評価を低下させる記述が含まれていると指摘したが、いずれの記述も公共性があり、前提としている事実に真実性・真実相当性があると判断した。「政治家に金を出して利益をむさぼろうという輩」といった吉田会長について揶揄するような表現も、意見・論評としての域を逸脱しておらず、違法性がないと認定した。名誉感情の侵害もないとした。

澤藤弁護士らによると、DHCと吉田会長が「8億円問題」への批判に対しておこした名誉毀損訴訟は、少なくとも10件あり、現在9件が係属中。今日の判決は、地裁判決としては3件目になる。先行している2件はいずれも、1審と控訴審でDHC・吉田会長側が敗訴し、最高裁に上告中だという。

●言論を封殺する「SLAPP訴訟」とは認められず

澤藤弁護士側は、請求額が6000万円と高額である点や、訴訟を起こす前に、警告や吉田会長からの反論がなかったことなどを理由に、「自己に不都合な言論を封殺しようとするSLAPP(スラップ)訴訟だ」として、裁判所が訴訟を却下すべきだと主張していた。だが、この点について判決は、ブログ記事に断定的・強い表現の批判が含まれており、適法かどうかの判断が「必ずしも容易ではない」として、被告側の主張を退けた。

(弁護士ドットコムニュース)

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