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クラブが著作権料支払わず「ピアノ生演奏」「カラオケ」して逮捕、なぜなのか?
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クラブが著作権料支払わず「ピアノ生演奏」「カラオケ」して逮捕、なぜなのか?

著作権料を支払わずにカラオケやピアノの生演奏を行っていたとして、東京・新宿歌舞伎町のクラブ経営者が警視庁に逮捕された。

報道によると、経営者は2015年6月、著作権料を支払っていないのに、店内でカラオケを客に歌わせたり、ピアノの生演奏を行ったりしたとして、著作権法違反などの疑いが持たれている。店にはグランドピアノが置かれ、演奏者を雇って客に生演奏を聴かせていた。

JASRAC(日本音楽著作権協会)から繰り返し注意を受けていたが、開店した1985年ころから著作権料をほとんど支払っていなかった。また、裁判所からカラオケ機器の使用を差し止める仮処分も出されていたが、これを無視して使用を続けていた。JASRACは、2015年11月、経営者を著作権法違反(演奏権侵害)で警視庁新宿警察署に告訴していた。

今回なぜ逮捕にまでいたったのか。著作権法違反で刑事事件にまで発展するのはどんなケースなのか。著作権問題に詳しい太田純弁護士に聞いた。

●処罰範囲が広く、法定刑も重くなってきている

「著作権法違反容疑での検挙は、数は多くないものの、以前よりも頻繁な印象を受けます。ゲームソフトの違法配信や、写真や動画を無断でネット上にアップしたケースなどの事案が挙げられます」

太田弁護士はこのように述べる。通常の刑事事件と比べて、どんな特徴があるのか。

「著作権侵害は犯罪ですが、違反者を処罰するには、一部の処罰類型を除いて、被害者である著作権者が告訴することが前提となります。

このように、被害者が告訴することが前提となる犯罪を『親告罪』といいます。最近では、著作権違反を、親告罪ではなく、告訴が不要でも立件できる『非親告罪』にするべきか、という議論が注目を集めています。

また、法定刑もかなり重く、著作権、出版権、著作隣接権の侵害は、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金とされています。法人の違反者の場合には3億円以下の罰金、さらに著作者人格権、実演家人格権などの侵害は、5年以下の懲役または500万以下の罰金などと定められています。

2012年10月の著作権法改正では、私的利用目的であっても、違法ダウンロードが処罰される場合を新規に規定するなど、処罰対象も広く法定刑も重くなってきています」

●逮捕にいたったポイントは?

今回のケースで逮捕にまでいたったのは、なぜだろうか。

「今回のケースでは、JASRACのプレスリリースによれば、本件店舗における著作権侵害行為に対して、まず民事的な法的措置が先行しており、2014年10月に東京地裁執行官によって、ピアノやカラオケ装置に対し封印がなされる仮処分執行を受けたようです。

にもかかわらず、その後も本件店舗の経営者が、この執行官の封印を2度にわたり破棄して、無断で楽曲を利用していました。また、封印を破棄したことに関しては、東京地裁執行官が告発をしたことから、今回、店舗の経営者は、封印等破棄の容疑でも逮捕されています。

裁判所(民事)の仮処分や執行官の封印にも背き、違反を繰り返していては、刑事告訴をもって対処するほかはなく、また仮処分にも反したならば、犯罪事実や故意も、容易に認定できるといえるでしょう。

こうしたことから、著作権違反の点についても、逮捕にまでいたったのだと推察できます」

太田弁護士はこのように分析していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

太田 純
太田 純(おおた じゅん)弁護士 太田純法律事務所
訴訟事件多数(エンタメ、知的財産権、名誉毀損等)。その他、数々のアーティストの全国ツアーに同行し、法的支援や反社会的勢力の排除に関与している。

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