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「迫害を受けたコンゴ人男性マサンバさんを難民認定せよ」東京地裁が国に命令
コンゴ人男性のマサンバ・マンガラさん。「もし判決がひっくり返った場合、本国で迫害を受けることになりかねない。顔は撮影しないで」と要望があった。

「迫害を受けたコンゴ人男性マサンバさんを難民認定せよ」東京地裁が国に命令

東京地裁(谷口豊裁判長)は8月28日、コンゴ人の男性マサンバ・マンガラさん(39)を「難民認定」するよう、国に命じる判決を下した。判決を受けて、東京・霞が関の司法クラブで記者会見したマサンバさんは「これまでいろいろな苦労があったが、今日の判決には非常に満足している」とほほえんで語り、支援者に感謝を伝えた。

代理人の神原元弁護士は「難民認定を義務づける判決をもらえたのは大きい」としつつも、「本来なら裁判になる前の段階で、とっくに難民認定されているべきケースだ。またひとつ、日本の難民認定行政の欠陥があらわになった」と、難民認定のあり方に疑問を投げかけた。

●反政府デモの参加者は「拷問」を受けていた

本人や弁護士の説明によると、マサンバさんは政情不安が続くアフリカ中部の国「コンゴ」で、2005年から反政府デモに参加し、当局に逮捕されるなどの弾圧を受けていた。マサンバさんが参加した2008年2月の反政府デモでは、警察当局がマシンガンを発射したり、参加者を拘束して拷問するなど、大がかりな迫害があった。

当局の拘束を逃れたマサンバさんは、親戚を頼って、国内の小さな集落に潜伏していたが、検察からの出頭命令を受け、国外脱出を計画。偽造パスポートで2008年9月30日に出国し、10月2日に成田にたどり着いた。日本に来たのは、各国にビザ申請をしたところ、たまたますぐにビザを出してくれたからだったという。

ところが、マサンバさんが同年10月14日に行った難民申請は、2010年3月に却下。異議申立も棄却されたため、2013年4月に提訴に至っていた。

●「検察の呼び出し状」まで提出していたが・・・

東京地裁判決は、コンゴの警察当局が、反政府デモの参加者に対して、過剰な実力行使や非人道的な取扱いを行っていたとして、もしマサンバさんが拘束されれば同じような扱いを受ける可能性があったと指摘した。また、マサンバさんが本国で行った行為は、「政治犯罪」にあたり、マサンバさんは難民条約上の「迫害」を受けていたと認定。マサンバさんを難民として認定するよう、法務大臣に義務づけた。

代理人の神原元弁護士は「難民認定は、迫害の証拠がないといって却下されることが多い。一方、マサンバさんは迫害の証拠として、コンゴの検察からの呼び出し状まで提出したが、なぜそれが手に入ったのかなどと勘ぐられ、難民申請を却下されていた」と指摘。「資料がなくてもダメで、あってもダメ。こんなことだから、昨年1年間の難民認定がたった11人という、世界的に見てもおかしな運用になってしまっている」と、制度運用の問題点を指摘していた。

●コンゴに3人の子どもを残したまま

なお、マサンバさんは日本への入国後、しばらくは難民申請者への補助で暮らしていたが、入国管理局に難民ではないと判断されてからは、支援者からの援助を受け、コンゴ出身の友人宅に居候をしながら暮らしているという。

現在は、在留特別許可も認められず「仮放免」という状態。3人の子どもをコンゴの親戚のもとに残しており、連絡は取っているが、いままでの状況では日本に呼び寄せることもできなかったという。マサンバさんは「一番大変なのは、働くことが禁じられていること。生活に十分なお金がなく、食べるのに苦労している」と話していた。

難民申請や裁判を支援してきたという小笠原友輔弁護士は「国は、判決を謙虚に受け止めて、控訴せずに、速やかに難民認定していただきたい」と話していた。

法務省入国管理局は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「判決内容を精査し、対応を検討のうえ、適切な対応をしたいと考えている」とコメントした。

(弁護士ドットコムニュース)

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