弁護士ドットコムが選ぶ 2010年版法律ニュース予想番付
弁護士ドットコム・監修弁護士と専属スタッフが、2010年、世間で注目を集めそうな法律ニュースを独自にランキング!
法律関係者の間で「話題に上ること間違いなし!」のホットな法律ニュースや、現在国会に提出されている法案の中から、議論を呼びそうな法律をピックアップ!
弁護士ドットコム特別企画
弁護士ドットコム・監修弁護士と専属スタッフが、2010年、世間で注目を集めそうな法律ニュースを独自にランキング!
法律関係者の間で「話題に上ること間違いなし!」のホットな法律ニュースや、現在国会に提出されている法案の中から、議論を呼びそうな法律をピックアップ!

最大5.00の1票の格差に違憲判決
1票の格差が最大5・00倍だった7月の参議院議員選挙における選挙区の定数配分は憲法違反として、東京都内の女性が都選挙管理委員会に選挙無効(やり直し)を求めた訴訟で、2010年11月17日、東京高等裁判所は「違憲状態」であるとの判決を言い渡しました。
そもそも1票の格差とは、国政選挙などで有権者が投じる票の有する価値の差のことをいいます。7月の参院選挙では、鳥取県の有権者の投票が1票とすると、神奈川県の有権者による投票の価値はわずか0.2票分しかありませんでした。
問題のポイントとしては、国民ごとに1票の価値の不平等が生じていることがまず挙げられます。
そもそも、憲法14条によって、国民はみな平等であると定められています。しかし7月の参院選のように神奈川県の有権者の投票の価値が鳥取県の有権者の投票の価値の5分の1しかないとなれば、同じ国民間で不平等が生じているといえます。この点が憲法に違反していないかが問題になります。
その他の問題のポイントとしては、一人一票でないことは日本が代表制民主主義を採用しているという憲法の原則にしていないか、という点です。
そもそも代表制民主主義とは、人口の多数が国会議員の多数を選ぶ制度のことをいいますが、今回の参院選では、人口の33%が選挙区選出議員の過半数(74人)を選出しており、人口の少数が国会議員の多数を選んでいます。つまり、一人一票の原則が守られていないために、代表制民主主義に違反することとなっており、結果憲法に違反するのではないかが問題となります。
本判決を受けて、東京都選挙管理委員会は30日、判決を不服として最高裁に上告しました。判決が選挙の無効を認めなかったことから、原告側も同日、上告しました。
これまで最高裁で参院選の1票の格差について違憲判決が下されたことはなく、1月25日の広島高裁で下された昨年8月の衆院選違憲判決の上告審とともに最高裁の判断が注目されます。

検察審査会が小沢氏に対して2度目の起訴相当の議決
2010年10月4日、東京第5検察審査会は、小沢一郎元幹事長(68)の資金管理団体「陸山会」による土地購入を巡る事件について、小沢氏を「起訴相当」としました。
これにより、小沢氏は、東京地裁が指定する検察官役の弁護士により、2004年?2005年分の政治資金規正法違反容疑(虚偽記入)罪で強制的に起訴されることになります。
このような強制起訴ですが、検察による起訴と何が違うのでしょう?
そもそも強制起訴とは、検察が不起訴とした事件について、市民11人により構成される「検察審査会」が二度、起訴すべきであると議決した場合に強制的に起訴されることをいいます。
刑事訴訟法上、起訴便宜主義が採用されています。起訴便宜主義とは、検察官が犯人の性格や年齢、犯罪の軽重や情状を考慮し、訴追するか否かを判断するものであり、起訴するか否かについては原則として検察官の裁量に委ねられています。
強制起訴は検察が不起訴と判断しても強制的に起訴となる点で、起訴便宜主義の例外的制度となります。
今回の事件についても、東京地検特捜部は2度にわたり小沢氏を不起訴処分にしていました。
小沢氏は2011年1月にも強制起訴されると見られており、小沢氏の民主党内での立場にも影響を与えるのではないか、とされています。
今後の動向が注目されます。

会社更生法の申請により再建へ
2010年1月19日、経営不振・債務超過を理由に、日本航空(通称:JAL)は、子会社の日本航空インターナショナル、ジャルキャピタルとともに、東京地方裁判所に会社更生法の手続を申請、受理されたことを受けて、株式会社企業再生支援機構をスポンサーとして、経営再建の道を図ることとなりました。
その後8月31日に東京地裁に更生計画案が提出され、11月30日に東京地裁が更生計画案を認可しました。
なぜJALは会社更生法が適用されても(=倒産しても)存続できるのでしょうか?
そもそも、会社更生法とは会社が自力ですべての債務の返済ができなくなったことを理由として、再建を目的とした更生手続を行う場合について定められた法律です。そして、会社更生法の適用を申請することは端的にいえば、更生会社が「今抱えている債務を全額返済しきれないので、大幅に免除してほしい」と依頼することをいいます。
つまり、会社更生法の適用を申請することは、会社の再建を前提として、現在その会社が抱えている負債を免除する効果があります。
これにより、会社は再建に向けて存続することができるのです。
今後、企業再生支援機構は日航に対し公的資金で3,000億円を出資し、運航を継続させながら3年間で再建を図る計画になっており、今後の動向が注目されます。

刑事訴訟法の改正により殺人罪の時効が廃止に
2010年4月27日、刑事訴訟法などの改正法が施行されました。これにより、殺人罪などの時効が廃止されることになりました。
これを受けて、時効廃止を求める遺族らでつくる「宙の会」代表幹事で平成8年に次女を殺害された小林賢二さん(63)は、「これほど大きな法律改正が一気に可決したことは感慨深い」と話し、「遺族の立場が伝えられるようになり、世論が高まった」とコメントしました。全国犯罪被害者の会(あすの会)の代表幹事で弁護士の岡村勲さんも「犯罪被害者の悲願で心から歓迎する」とコメントしています。
このように犯罪被害者らが改正を歓迎する一方で、憲法上の問題も指摘されています。
憲法39条は訴求処罰の禁止(行為時に適法であった行為を後に成立した法律で処罰することを禁止すること)を定めているとされていますが、時効を廃止することは本条文に違反するのではないかが問題となります。
日弁連会長である宇都宮健児氏も「成立した法律は、現に時効が進行中の事件についても時効の廃止と延長を認めるもので、憲法に違反する強い疑いがある」と指摘しています。その上で、「何十年も経過した後に起訴され、防御権を尽くせず有罪となり、新たな冤罪(えんざい)被害者を生み出すことがあってはならない」とコメントしました。
さらに議論を深めていく必要がありそうです。

史上初のペイオフ発動
2010年9月10日、日本振興銀行(東京都千代田区)が、多額の不良債権処理のため、金融庁に預金保険法に基づく破たん処理を申請しました。
破たんの理由は、多額の不良債権処理のために2010年9月期で債務超過に陥り、事業継続が困難となったためです。
これを受け、金融庁と預金保険機構は、初めて「ぺイオフ」を発動しました。
ペイオフとは、金融機関が破たんした場合に、破たん金融機関を清算して預金を払い戻す処理方法のことをいいます。
私たちの預金を預かる銀行は万が一の倒産に備え、毎年預金量の一定割合を保険料として預金保険機構に支払っています。その金融機関が破綻した場合は、預金保険機構が代わって元本1,000万円とその利息を上限に預金者に支払います。こうした預金者に対する保険金支払のことを、一般的にペイオフと呼んでいます。
ペイオフの発動は昭和46年の制度創設以来初めてで、保証額を超える分は一部カットされることとなります。金融庁がペイオフ発動に踏み切った背景としては、振興銀の預金残高は10年6月末時点で、約6101億円。1000万円を超える預金者は3月末で約4800人、計686億円と比較的少なく、金融庁は経営破綻が金融システムに与える影響は限定的と判断された点にあります。
なお、ペイオフの対象は限定されており、普通預金、定期預金などに適用がある一方、外貨預金などには適用がないので注意が必要です。
ウィキリークスとは、内部者などの関係者から匿名で政府、企業らの機密情報の投稿を受け付け、その情報を内部で精査した上、公開するウェブサイトです(創設者はジュリアン・アサンジ氏)。投稿者が投稿により不利益を受けないようにするため、匿名性を維持し、機密情報から投稿者が特定されないようにするシステムが構築されています。
ウィキリークスは、2010年に入ってからも様々な重要情報を公開しています。
まず、2010年7月25日には、アフガニスタン紛争に関するアメリカ軍や情報機関の機密資料約75,000点以上が公表されました。その後同年10月22日には、イラク戦争に関する米軍の機密文書約40万点がウィキリークス上で公開されました。さらには11月28日、米国外交機密文書251,287件の文書のうち、219件が各国のマスコミ報道によって同時に公開されました。ウィキリークスは、全ての外交機密文書を数カ月かけて公開することを計画しています。
このように様々な情報を公開するウィキリークスに関する問題ですが、国家の機密情報保持と、国民の知る権利のバランスがポイントとなります。そもそも知る権利とは、一般国民がその必要とする情報を妨げられることなく自由に入手できる権利をいいます。日本では、表現の自由と表裏の関係にある権利として憲法21条により保障されています。
国民の知る権利を重視すべき、と考えればあらゆる国家の情報を公開すべきことになりそうです。確かに、情報の公開性と透明性は民主主義において不可欠です。しかし、外交問題のように国家の情報の中でも機密性の高いものも公開してしまえば、外交の基本である機密保持の原則が守られなくなります。これは、各国の外交官は正直な意見交換をしなくなり、外交が立ち行かなくなることにもつながりかねません。
よって、ウィキリークスの情報公開の是非を問うにあたっては、国家の機密情報保持と国民の知る権利のバランスをいかに考えるかが非常に重要となります。
現在のところウィキリークスによる公開情報はアメリカの機密情報が大きな話題を呼んでいますが、今後、日本の機密情報も対象になる可能性があります。、日本でも国家の機密情報保持と国民の知る権利のバランスについて十分な検討を行っていくことが必要となるでしょう。
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東
横綱
特捜部長、担当主任検事らが逮捕される異例の事態に
2010年9月10日、郵便不正事件に関わったとして虚偽有印公文書作成・同行使容疑で逮捕・起訴されていた厚生労働省雇用均等・児童家庭局長・村木厚子さん(2009年6月14日逮捕当時)に対し、村木さんの事件への関連を裏付ける証拠は改ざんされていたものであったとして無罪判決が下されました。
そもそも郵便不正事件とは、障害者団体向けの郵便割引制度を悪用し、自称障害者団体などの名義で企業広告が格安で大量発送されたとして、大阪地検特捜部が捜査、郵便法違反の疑いなどで家電量販大手の元部長や広告会社元取締役らを逮捕した事件です。不正に免れた郵便料金は少なくとも220億円に上るとされており、多くの被告の有罪が確定しています。
この事件の問題点は大阪地検特捜部による証拠の偽造です。
大阪地検特捜部は、元局長・村木厚子さんが虚偽の障害者団体証明書発行を指示したとして逮捕・起訴しました。しかし、裁判上で村木さんの事件への関連を証明するフロッピーディスクを検察が改ざんしていたことが明らかになり、村木さんは本事件に関わっていないと判断され、無罪判決が下されることとなりました。
これを受けて9月21日、担当主任検事である前田恒彦検事が証拠物件であるフロッピーディスクの改ざんによる証拠隠滅容疑で、前田検事の当時の上司である大坪弘道元特捜部長及び佐賀元明元副部長が犯人隠避容疑で、それぞれ逮捕されるという、極めて異例の事態となりました。
検察が証拠を偽造したという報道は検察内外に衝撃を与え、検察トップの大林宏検事総長(63)が2010年中に辞任するという事態にまで発展しました。
今後の検察の再生に注目が集まります。
西の横綱[「一人一票」問題、衆議院・参議院で違憲判決・違憲状態判決]の解説を読む番付表に戻る
大関
多重債務者の増加を防ぐための法律が完全施行
2010年6月18日、平成18年12月に全会一致で可決・成立していた改正貸金業法が完全施行されました。
改正の大きなポイントとしては以下の3点です。
(1)総量規制(借りすぎ、貸しすぎの防止)
借入総額が年収の3分の1を超える場合、新たな借り入れができなくなります。また、借入する際に基本的に「年収を証明する書類」が必要となります。
(2)上限金利の引き下げ
これまでいわゆるグレーゾーン(違法だが罰則がない)が生じていた問題を改善するため、法律上の上限金利が29.2%から、借入金額に応じて15%?20%へと変更されました。
(3)貸金業者に対する規制の強化
法令順守の助言・指導を行う国家資格がある者(貸金業務取扱主任者)を営業所に置くことが必要となります。
以上のような改正の目的は、借主保護にあります。つまり、貸金業法改正が成立した平成18年当時、返済しきれないほどの借金を抱えてしまう「多重債務者」の増加が、深刻な社会問題となっていました。そこで、この問題を解決するため、貸金業法が改正されることとなりました。
このように消費者金融に対する規制が実施されましたが、施行された6月18日以降、新たに借金ができなくなった人をターゲットにした、いわゆる「ソフトヤミ金」や「クレジットカードのショッピング枠を現金化」などの脱法的ビジネスが横行するなど、新たな問題が発生しています。
今後、借主を保護するためのさらなる方策が検討されることになるかもしれません。
西の大関[小沢一郎氏の強制起訴]の解説を読む番付表に戻る
関脇
中国人船長を公務執行妨害の容疑で逮捕も釈放
東シナ海の尖閣諸島沖で中国漁船と石垣海上保安部の巡視船が衝突した事件で、那覇地検は2010年9月24日、同保安部が公務執行妨害の疑いで逮捕した中国人船長を処分保留のまま釈放すると発表しました。
海上保安庁の巡視船「よなくに」が中国漁船に対して領海から立ち去るよう警告したにもかかわらず、漁船は「よなくに」に接触して逃走したため、海保は漁業法に基づく立ち入り検査を行おうと無線などで再三にわたり停船を呼びかけました。しかし、漁船は逃走を続け、さらに別の巡視船「みずき」に船体を衝突させました。
これが意図的な海上保安官の立ち入り検査妨害だとして公務執行妨害容疑で漁船船長は逮捕されることとなりました。
那覇地検の鈴木亨次席検事は、24日の記者会見で、処分保留のまま釈放にした理由について、巡視船側の被害が軽微だったことなどに加え「わが国国民への影響と今後の日中関係を考慮すると、これ以上、身柄の拘束を継続して捜査を続けることは相当でないと判断した」と説明しました。
その後、当時神戸海上保安部に所属していた一色正春・元海上保安官(43)がyoutubeで衝突映像を公開したことも社会に大きな影響を与えました。
漁船を衝突させる行為は最悪の場合、巡視船が航行不能に陥る危険性もあり、公務執行妨害の程度が大きく、悪質性が高いとの見解もあり、処分保留のまま釈放、という判断の是非が問われています。
西の関脇[日本航空(JAL)が会社更生法申請へ]の解説を読む番付表に戻る
小結
2人を殺害し、遺体を捨てた男性に死刑判決
2010年11月16日、東京・歌舞伎町のマージャン店経営者ら2人を殺害し、遺体を切断して捨てたなどとして、強盗殺人や殺人、死体遺棄などの罪に問われていた事件で、横浜地裁朝山芳史裁判長は「極めて利欲的な犯行で、殺害方法も最も残虐」と述べ、無職池田容之(ひろゆき)被告(32)に対して死刑判決を下しました。
裁判員裁判で死刑判決が下されるのはこの事件が初めてです。
裁判員制度開始前より、重大事件を扱う裁判員制度については死刑という極刑を下すかどうかの判断が裁判員に求められることが不可避であるため、一般から選ばれた裁判員にとって心理的負担が大きいとの指摘がなされていました。
朝山裁判長は閉廷前に「あなたは法廷ではいかなる刑にも服すると述べているが、重大な結論ですから、裁判所としては控訴することを勧めます」と付け加えました。この発言には、裁判員らの死刑という判断を最終判断にせず、控訴審の裁判官に最終判断を委ねることにより、裁判員らの心理的負担を緩和する意図があったとみられています。
今後、裁判員裁判も数を重ねるに従い、今回のような死刑判決における裁判員の心理的負担の緩和などの様々な問題が生じることが予想されます。
問題が生じた際の迅速な対応が期待されます。
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前頭
小中学校教育のみならず高校教育も無償に
2010年3月31日、高校授業料無償化法が参院本会議で、与党と公明、共産両党などの賛成多数で可決、成立し、4月1日から施行されました。高校授業料無償化法は、民主党が2009年の衆院選マニフェスト(政権公約)で主要政策に掲げていた法律です。
これにより、約4000億円の予算で公立高校の授業料を実質無料とし、私学に通う高校生の親にも収入に応じて約12万円から約24万円が支給されることとなりました。
憲法上、義務教育(小・中学校教育)は無償とされていますが、本法律により、公立に限りますが、高校教育も無償とされることになりました。
この法律で問題の一つとして挙がったのは、朝鮮学校も適用対象に含めるか、です。具体的には、朝鮮学校を適用対象から外すことは憲法14条に反するのではないかが問題となります。
この問題について、文科省は11月5日、教育内容を問わず、国内の朝鮮学校すべてが事実上クリアできる審査基準を決定していました。しかし、11月24日に起こった北朝鮮による韓国砲撃を受け、朝鮮学校の授業料無償化問題について「現在進めているプロセスをいったん停止する方向に動く」と述べ、無償化の申請受け付けなどを当面見合わせる考えを示しました。
朝鮮学校においても授業料の無償化が実現されるか、今後の動向が注目されます。
西の前頭[日本振興銀行に対するペイオフ発動]の解説を読む番付表に戻る