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「新聞の押し売り」コロナ禍でも減らず、認知症の高齢者らがターゲットに 報道NGOが警鐘
特定非営利活動法人Tansa(Tokyo Investigative Newsroom Tansa)の渡辺周編集長(2021年4月7日、FCCJ)

「新聞の押し売り」コロナ禍でも減らず、認知症の高齢者らがターゲットに 報道NGOが警鐘

新聞販売の現場で、高齢者を狙う悪質なトラブルが頻発しているとして、元新聞記者が編集長を務めるジャーナリズムNGOが警鐘を鳴らしている。

4月7日、都内の日本外国特派員協会(FCCJ)で会見が開かれ、海外のジャーナリストに向けて、実態が報告された。

認知症や一人暮らしの高齢者が執拗な勧誘にあい、契約させられるなどしており、国民生活センターには毎月100件ほどの相談が寄せられているという。

●「何度も断ったが押し切られ」

会見を開いたのは、今年3月に「ワセダクロニクル」から改称した「特定非営利活動法人Tansa」の編集長・渡辺周氏。元朝日新聞の記者で、2020年12月から「高齢者狙う新聞販売」という探査報道を続けている。

渡辺氏らが国民生活センターに情報公開請求をしたところ、高齢者への新聞販売に関する相談は毎月100件ほどあり、緊急事態宣言中だった2020年4月では148件、同5月で126件あったことがわかったという。

中には次のようなものもあったという。

「介護施設でヘルパーをしているが、認知症の利用者が強引に契約させられ、代わりに解約交渉しているが不安になった」(2020年1月)

「一人暮らしの母の所に新聞勧誘員が来て30分くらい粘られた。目が悪くて字が読めず、何度も断ったが押し切られ契約してしまった。解約したい」(同4月)

「母親が認知症なので、知らない間に新聞の契約をしてしまい、何社も契約している。今日、契約書を見つけた。どうしたらいいか」(同5月)

月11万円の年金で生活する一人暮らしの認知症女性は、4つの新聞と契約していた(会見のスライドより)

渡辺氏は、「家族や介護ヘルパーがいたから相談できるが、家族と疎遠だと難しい。月100件の苦情はごく一部でしょう」と指摘する。

●「新聞はまったくペナルティーを受けません」

悪質な営業の背景には新聞社の厳しい経営状況があるという。

全国紙・地方紙・スポーツ紙を合わせた2020年の発行部数は3509万部で、前年から272万部減った。前年比7.2%減で、減少幅は過去最大だ。

Tansaでは、全国の新聞社50社に対し、こうした高齢者との販売トラブルを把握しているかなどについて、今年1月に質問状を送っている。その結果も踏まえて、渡辺氏は次のように分析する。

「『お悔やみ欄(死亡記事)』など地域に密着した情報がある分、地方紙の方が(相対的に)経営は安定している。

全体的に見ると、全国紙を中心に行われている話なのではないか」

そのうえで、「かんぽ生命(保険)の不正販売では、お年寄りを狙った押し売りで業務停止命令を受けた。新聞はまったくペナルティーを受けません」と強く批判した。

●文春砲の背景「新聞は内部告発者の信頼も失っている」

会見では、海外の記者から、日本の新聞ジャーナリズムをめぐる質問も飛んだ。

たとえば、昨今の社会的スクープの多くは、新聞発ではなく、「文春砲(週刊文春)」であることが多い。この点について見解を訊かれた渡辺氏は、以下のように話した。

「日本の新聞は読者の信頼を失っているだけでなく、内部告発者の信頼も失っている。文春は戦うが、新聞は途中で折れてしまう。自分たちは戦っていると思っているかもしれないが、外からはそう見えていない。だから文春に情報が集まってしまう」

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