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「バイトにもボーナス支給を」判決が画期的 不合理な格差ダメ、原告代理人にきく
大阪高裁(LOCO / PIXTA)

「バイトにもボーナス支給を」判決が画期的 不合理な格差ダメ、原告代理人にきく

正規職員と非正規職員との間にある「待遇差」が、労働契約法の禁じる「不合理な格差」なのかどうかが争われた裁判。控訴審判決で大阪高裁が2月15日、「不合理」とし、アルバイトの女性に賞与を支給すべきだと判示したことが「画期的だ」と話題になっている。

原告は、学校法人大阪医科大学(現・大阪医科薬科大学)で2013年1月〜2016年3月にアルバイト(時給制)で働いていた50代女性。

正規職員と同じように出勤し、勤務時間や仕事内容も同じだったのに、賞与がないなどの差があるのは違法だとして、大学に対して賞与など約1270万円の支払いを求めていた。

判決は、月給制の契約職員にも正規職員に対する支給額の8割が支給されている点を踏まえると、このアルバイト女性に賞与が全く支給されないことは不合理だと判断した。ほかにも夏季休暇と病気休暇についての待遇差を不合理だと認め、109万円を支払うよう、大学側に命じた。

一審・大阪地裁判決がひっくり返ったのは、なぜなのか。原告代理人を務める谷真介弁護士に今回の判決の意義などとともに聞いた。

●不合理認定の意義、とてつもなく大きい

ーーまず、判決の評価をお願いします

「今回の高裁判決は、アルバイト職員という非正規職員に関する賞与(ボーナス)を支給しないのは不合理とした初めての判決です。

2018年6月1日のハマキョウレックス事件の最高裁判決では、各手当の格差を不合理とし、非正規労働者の格差是正を進める大きな一歩となりましたが、賞与については、全国の同種事案で使用者側の裁量が広く認められ、退けられてきました。

しかし、賞与については、退職金とともに、非正規労働者の正規労働者との労働条件の『格差』を大きくする最大の要因になっており、格差是正における悲願です。その差を、しかも高裁レベルで不合理として違法性が認められた意義は、とてつもなく大きいといえます」

ーー本件の原告は長い期間働いていたわけではなかったのですよね

「はい。原告が請求した対象期間は採用直後からの3年間(最後の1年は病気で休職)であり、他の同種事案のように長期間働いていたわけではありません。

このような比較的短期間のアルバイトであっても、雇用期間の定めの有無によって不合理な差別をしてはならないとした労働契約法の趣旨から、賞与も含めて不合理な格差を設けてはならないとした点は、実務上も重要な意義を有しています」

●背景に格差是正の「司法の流れ」

ーーなぜ、今回の逆転判決が出たと思われますか

「地裁判決は、『アルバイト職員の年収が新入正職員の約半分であっても、正職員への登用制度や中途採用の方法もあるからアルバイト職員の能力や努力次第で克服可能であり、また年収差は一定の範囲にとどまっており、不合理とまではいえない』として、基本給や賞与の相違を不合理とはいえないとしました。

これに対し、高裁判決は、大学が能力や努力の差をもって人事制度をつくっているというより、単にアルバイトを人件費が安く、いつでも契約期間満了で雇止めできる労働力としていいように使っている実態をよく見たのだと思います」

ーーなるほど、確かにそうした実態はよく指摘されますね

「はい。それなのに、一も二もわからないはずの新入職員にも一律に賞与が支給される一方で、同様の経験年数のアルバイト職員はその約半分の年収というここまでの差があっていいのか、という労働契約法20条が創設された趣旨が重視されました。

また地裁判決後には、先ほど述べた最高裁判決(ハマキョウレックス事件)が出され、非正規労働者の格差是正をしていく司法の流れができたことも大きいと思います」

●非正規にも賞与支給の流れに

ーー今回の判決がもたらす同種事案への影響についてお聞かせください

「本件の大学のように一律支給の賞与制度であるにもかかわらず、非正規労働者には賞与を一切支給していない企業は相当数あると思います。

2018年12月に政府が出した『同一労働同一賃金ガイドライン』でも、非正規労働者に一切賞与を支給しない制度には警鐘が鳴らされています。

本判決が確定すれば、先ほど述べたような企業は人事政策の転換が迫られ、非正規労働者の就労状況に応じて一定の賞与を支給する流れになると思います。

もし一定の差を設けるとしても、単に『正社員だから』『非正規だから』というのではダメで、個々に差を設ける具体的理由について、合理的に説明できなければならないとされるでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

谷 真介
谷 真介(たに しんすけ)弁護士 北大阪総合法律事務所
2007年弁護士登録(大阪弁護士会)。大阪弁護士会労働問題特別委員会副委員長、日本労働弁護団全国常任幹事。労働事件、アスベスト被害事件を多数担当。その他、内閣官房機密費情報公開訴訟弁護団。

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