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居残り医師の「自己研鑽」は労働時間にあたるのか 厚労省が注目見解示す
厚生労働省

居残り医師の「自己研鑽」は労働時間にあたるのか 厚労省が注目見解示す

医師や病院経営者、有識者らで構成する「医師の働き方改革に関する検討会」が11月19日、東京都内で開かれた。医師が自らの能力を高めるために行う「研鑽」(自己研鑽)について、労働時間に該当する研鑽なのかどうか、厚生労働省側が考え方のたたき台を示した。それを受け、医療現場の実態を踏まえた議論が交わされた。

●見学時の手伝いが慣習化→見学すべてが労働時間

この日の会合で厚労省労働基準局は、勤務時間外に医師が病院内に残って手術を見学するなどの研鑽について、労働時間にあたる場合とあたらない場合の考え方をいくつかのパターンを例示して説明。たとえば、自らの判断で終了可能なら該当せず、見学中に診療を手伝うことが慣習化していたら見学のすべてが該当するなどの見解を示した。(概要は末尾に掲載)

そのうえで、時間外に労働時間にはあたらない研鑽を病院内でする場合には、指揮命令をする地位にある上司の確認を得て、労働時間の適切な管理を図ることが望ましいとした。

●厳しい運用は「萎縮医療につながりかねない」

会合の構成メンバーからは「上司の考え方が大きく影響しそう。上司の意識改革を進めて行かないとなかなか厳しい。各診療科の先生が経営者のいうことを聞かないこともある。経営者がグリップするのは難しい。何らかのアプローチで意識改革が必要」との指摘があった。

また、「マネジメントへの知識がないため、わかりやすい説明が必要。部下の管理がめんどくさいから、じゃあ自分でやっちゃおうという『逆タスクシフティング』が副作用として考えられる」。さらに、厳しい運用をすると「萎縮医療につながりかねない」との声も出た。

長時間となりがちな労働時間についても、重ねて問題視され、「医師は死なないように働け、というのはおかしい。医師不足という現状があり、単に時間を規制するよりも医師を孤立させないケアを厚くしたほうがいい」などの意見も出た。

会合は、午後6時から約2時間にわたり開かれた。検討会は、来年3月末までをメドに議論の取りまとめをする予定だ。

※厚労省労働基準局が示した「医師の研鑽の類型と労働時間の基本的考え方」(抜粋)

<一般的に診療の準備行為または診療後の後処理として、以下の行為を行う時間は労働時間に該当>

・診療ガイドラインについての勉強

・新しい治療法や新薬についての勉強

・自らが術者等である手術や処置等についての予習や振り返り

<以下の項目について業務上必須ではなく、自由意思にもとづき、時間外に上司の指示なく行う時間は労働時間に該当しない>

・学会や外部の勉強会への参加、発表準備等

・院内勉強会への参加、発表準備等

・本来業務と区別された臨床研究にかかる診療データの整理、症例報告の作成、論文執筆等

・大学院の受験勉強

・専門医の取得・更新にかかる症例報告作成、講習会受講等

(弁護士ドットコムニュース)

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