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「高プロ制」に過労死遺族が猛反対「死んでも自己責任扱い」「当事者の声を聞いて」
会見する遺族ら(中央が寺西代表)

「高プロ制」に過労死遺族が猛反対「死んでも自己責任扱い」「当事者の声を聞いて」

衆議院で来週にも採決の可能性がある「働き方改革関連法案」。このうち、少なくとも「高度プロフェッショナル制度(高プロ制)」については過労死を増やすため、法案から削除すべきだとして、過労死遺族らが5月16日、厚労省記者クラブで会見を開いた。

全国過労死を考える家族の会の寺西笑子代表は、「過労死遺族は、裁判の中で大変な苦労をして、地獄のような苦しみを味わってきた。こうした悲しみ、苦しみを誰にも味わわせたくない」と語った。

●労災認定や使用者の責任を問うのが困難になる恐れ

高プロ制は、金融ディーラーやアナリストなど、年収1075万円以上の専門職を、労働時間規制から外すもの。野党や労働者側は「スーパー裁量労働制」や「過労死促進法」などと非難している。

批判が多い「裁量労働制」の場合でも、労働者には仕事の進め方についての裁量があるとされる。また、深夜や休日の割増があることから、使用者側にも労働時間を把握する必要性が生じる。

一方、高プロ制では、労働者の裁量は要件とされていない。加えて、割増がつかないことなどから、企業側の労働時間管理がより杜撰になることが考えられる。

「事業場内にいた時間」と「事業場外での労働時間」を足した「健康管理時間」の把握は求められるものの、労災認定は実労働時間がベースになるため、認定や使用者の責任を問うことが難しくなることが懸念されている。

●遺族「死人が増えても過労死は減る」

家族の会は、2015年に「労働基準法改正案」が閣議決定されてから、終始「高プロ制」などに反対の立場をとっている。

会見で寺西代表は、「再三、反対しているのに、来週にも強行採決されようとしている」と、遺族の思いが届かない苦悩を吐露。「当事者の声を聞いて、これ以上、悲しい遺族を作らないでください」と訴えかけた。この日、安倍晋三首相に宛てて、家族の会として面談の希望も出したという。

このほか、2013年に過労死したNHK記者の佐戸未和さんの母・恵美子さんは、「死人が増えても(統計上の)過労死は減るという事態が起こります。死んでも自己責任で片付けられる。本人も無念ですが、苦しむのは残された遺族です」と語った。

法案では、「平均給与額の3倍を相当程度上回る」年収(1075万円)が対象とされており、影響は限定的という意見もある。この点について佐戸さんは、「労働者派遣法が施行後、ほぼ全職種に広がったように、(高プロ制でも)対象年収や職種が拡大される恐れがある」と述べた。

(弁護士ドットコムニュース)

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