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ヤマトドライバー「アマゾンやZOZOは相変わらず」荷物減少も現場の実感乏しく
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ヤマトドライバー「アマゾンやZOZOは相変わらず」荷物減少も現場の実感乏しく

「アマゾン多過ぎ」ーー。ちょうど1年前、弁護士ドットコムニュースにそう語ってくれたヤマト運輸の男性セールスドライバー(SD)がいる。この1年、宅配業界大手では、運賃の値上げなど、労働環境を改善する試みが広がっている。実際、ヤマトでは数字上、荷物量は減りつつある。しかし、現場では、まだまだ効果を実感しづらい状況にあるようだ。

首都圏で働くベテランドライバーのAさんは昨年同様、1日に150個ほどの荷物を運んでいる。「元々の量が多かったので、減っている実感がありません。不在も相変わらず多いです。どうして指定した時間にいてくれないのか…。アマゾンはDVDや書籍がほとんどで、梱包も小さくなりました。会社で受け取るんじゃ、ダメなんですかね」

●荷物量は2年前より多い…「アマゾンは一瞬減ったけど、すぐに戻った」

ヤマト運輸は10月1日、個人向けの宅配便(宅急便)の運賃を値上げした。大口との値上げ交渉の成果もあり、増加の一途だった宅配便の個数は10月、2年7か月ぶりに前年同月比98.9%と減少に転じた。11月には94.6%(5.4%減)を記録している。

しかし、2年前の2015年時と比べると依然として月500万個も多い。Aさんが実感は乏しいと言うのも頷ける。

荷物量の推移

ヤマトの宅配便の1〜2割はアマゾンだと言われてきた。だが、今年9月、ヤマトとアマゾンとの間で、運賃を約4割値上げする合意が概ねまとまったとの報道があった。1個約280円の運賃が400円ほどになるという。

となれば、10ー11月に減少した荷物はアマゾンが中心かと思いきや、Aさんの見解は違う。「アマゾンやZOZOTOWNの箱は相変わらず多い。かえって、割合が増えている気がします」

西日本エリアの男性社員Bさんも、同様の変化を感じている。「アマゾンは一瞬減ったんですよ。でも、すぐに戻った。仲間内では、デリバリープロバイダなどに出したんだけど、さばき切れなくなったんで、うちに戻ってきたのではと言われています」

宅配業界では、ヤマトと佐川急便が相次いで値上げを行った。結果、日本郵便の「ゆうパック」に荷物が集中。今年12月のゆうパックの配送量は前年同月比2割増で、一部で遅配も発生している。

では、一体どの荷物が移ったのか。Aさんは、「運賃の値上げで個人の荷物や、中小企業の荷物が移ったのではないか」と推測する。アマゾンのように体力がある企業よりも、むしろ中小企業への影響が大きかったのではないかというわけだ。

これは大口企業になるが、たとえば、日経新聞によると、楽天はヤマトを使って配送していた直営オンライン書店の荷物を11月から日本郵便に切り替えているという。実際には、ヤマトの当日配送なども、ゆうパックに流れているようだが、今もアマゾンの配送の大部分を支えているのは、ヤマトだ。

●頻繁だったシフト変更がこの2か月減った

日々の業務量には、そこまでの変化がないというAさんだが、この2か月ほどはプライベートのスケジュールが立てやすくなったという。「正社員は増えていないけれど、委託とアルバイトの人が多くなった」

ヤマト広報は、人数を発表していないが、年末に合わせて、各地域で人員配置を検討。「数ある仕事の中から選んでもらえる条件」をつけて、募集をかけたという。たとえば、神奈川エリアの時給2000円という条件は、大きな話題になった。「荒天によるフェリー欠航で、北海道を発着する荷物の一部が遅れたことを除くと、遅配は報告されていません」(広報)

こうした施策の結果として、Aさんの場合、これまで頻繁にあったシフト変更が、11月頃から減少、12月に入ってからは1度もないという。この点については、9月に中央労働基準監督署がヤマトに対し、調査改善を求める指導を行なっている点も影響していると見られる。

ただし、Aさんはこう続ける。「外部のスタッフは代金引換など、お金のことは扱えないし、クール宅急便や荷物の集荷もしない。配達以外の負担は変わりません。正社員が事故で動けなくなったりすると、余裕がなくなります」

●上層部から委託業者の利用を減らせとのお達し「何のための値上げだったの?」

業務量の変化について、西日本のBさんもキツさはさほど変わらないという。

「うちのエリアでは、確かに荷物量は減っているようです。委託業者の人も増えています。ただ、それでも一人一人の量に換算すれば、配達し切れるか、次の日に残すかの違い。しんどさはあまり変わりません。むしろ、休憩をきっちり取るよう指示が出ているので、かえってキツくなったかも」

そんなBさんの職場は今後、さらに忙しくなる可能性があるようだ。最近、上層部から委託業者の利用を控えるよう指示があったからだ。委託業者は通常、配達1個当たりいくらという契約になっており、費用がかさみすぎるというのだ。

「今年に入ってからの値上げは、『現場の労働環境を改善するために、利用者の皆さん、運賃改定を受け入れてください』という話ではなかったのかと思います。ただでさえ、キツキツの現有社員の労働密度を上げるというなら、一体何のための値上げだったのか」

ヤマト運輸は今年4月、荷物量を前年度の約18億6700万個から約8000万個減らす計画を立てた。しかし、荷物量は思うように減らず、今年9月、削減目標を半分の3600万個に下方修正した経緯がある。

今年11月までで比べれば、年間の荷物量は前年比101.8%と増えている。12月以降、荷物量は一層減少して行くと見られるが、元の荷物量が多かっただけに、今後従業員の負担がどの程度緩和されるかは、まだまだ不透明。現場が「働き方改革」の効果を実感するには時間がかかりそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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