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「上司の圧力で残業代を半分しか請求できず」ヤマトドライバー、労働環境改善を要求
団体交渉を申し入れた男性(8月18日厚生労働省記者クラブ)

「上司の圧力で残業代を半分しか請求できず」ヤマトドライバー、労働環境改善を要求

ヤマト運輸の兵庫県の営業所で働く、勤続20年以上のセールスドライバーの男性(40代)が8月18日、長時間労働が常態化しているとして、社外の労働組合「ブラック企業ユニオン」を通じ、ヤマト本社に労働環境の改善を求める団体交渉を申し入れた。(1)全国的な働き方の調査、(2)労働環境改善策の策定などを求めている。

男性は平均して月40〜60時間の残業をしているといい、お中元シーズンの8月期(7月後半〜8月前半)の残業時間は81時間と、過労死ラインを超えていた。ただし、労使で決める36協定の残業上限(特別条項)が今年から月90時間に引き上げられるなど、明確な労働基準法違反とは言えない状況のため、労基署ではなく、組合を通じて改善を求めたという。

男性は社外の労組に加入したことについて、「会社の労組は、話こそ聞いてくれるが、その後動いてくれなかった」と説明。「会社が本気で働き方改革をやろうとしていることは感じるが、現場では中間管理職が自分の数字を追い求めてしまい、ズレが生じている」などと話している。

●「アマゾンプライムデーはめちゃくちゃ荷物が多かった」

ヤマト運輸は今年、従業員の自己申告をベースに過去2年分の未払い残業代を支払った。男性も約73万円を受け取ったが、この金額は1年分の未払い残業代でしかないという。

「(上司の成績に響くため)上司から『休みが取れないのは努力が足りないからだ』などといった圧力があり、2年分は請求できなかった。労働時間の証拠が残っていない同僚もいるため、同じ環境で働いているのに、営業所にいる8人に支払われた残業代は10〜150万と大きな開きがあった」

男性は「働き方改革」としてヤマトが進める時間指定の縮小や荷物の削減などについても、「効果はあまり実感できない」という。たとえば、正午〜午後2時の時間指定が廃止されたが、午前中の荷物が午後に食い込んでしまうため、連続した休憩が取れないという。

荷物も減っていないそうで、ネット通販大手アマゾンについては、「この間(7月10、11日)のプライムデーはめちゃくちゃ荷物が多かった」。

●変形労働時間制のグレーな運用

加えて、労働時間を1日単位(8時間まで)ではなく、一定期間の総数で考える変形労働時間制の運用にも不満があるという。

ヤマトでは、月の初めにシフトが発表されるが、残業が前提の計画が組まれているという。さらに、「月に2〜3回はシフトが変わるのが当たり前。変更もその日、短いシフトにしてくれ、長いシフトにしてくれと言われる」という。

変形労働時間制の運用に当たっては、労働時間が平均して週40時間を超えないようにしなくてはならず、頻繁なシフト変更も認められていない。男性の職場では、グレーな運用がなされているようだ。

●ヤマト運輸「誠実に対応」「秋以降は環境改善が加速」

ヤマト運輸は団交について「誠実に対応していく」と回答。同社広報は「(顧客との)交渉ごとなので、急激な改善は難しい。ただ、働き方改革は徐々に効果が現れ始めている。秋以降は、荷物の減少が進むので、スピード感は増していくと思う」とも話した。

(弁護士ドットコムニュース)

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