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勤続30年超の部長「転籍」拒否で降格、工場で肉体労働…労働審判「元の部署に」
会見した男性

勤続30年超の部長「転籍」拒否で降格、工場で肉体労働…労働審判「元の部署に」

勤続30年超、部長まで務めたのにーー。出向先への転籍を断ったところ、クリーニング工場勤務を命じられ、給料も4割減ったとして、医療施設の設備管理などを行う「キングラン」グループに籍を置く男性社員(56)が、配転の不当を訴えていた労働審判事件で、東京地裁は6月9日、男性の出向元「キングランメディケア」に対し、出向前の部署に戻すことなどを旨とする審判を下した。

審判後、男性とともに厚労省記者クラブで会見を開いた、代理人の新村響子弁護士は「辞めさせるため、嫌がらせのための配転が後を絶たない」と日本社会の現状を批判。厚労省でパワハラの法規制が検討されていることを念頭に、「パワハラの一類型だと思う。国としても法律で対策すべきだ」と強調した。

●残業代未払い指摘すると「一人だけ定時退社」命じられ、肩身が狭い思い…

この男性は、1984年に同グループに入社。社員番号は19番という古株だ。以来、本社や別のグループ企業に異動しながら、業務管理や品質管理(ISO9001の認証維持)などに当たってきた。

男性は2014年、社長の親族が経営する同業他社に部長として出向。2016年5月下旬、転籍の打診を断ったところ、「嫌がらせ」が始まったという。6月末日で出向が解除され、船橋のクリーニング工場に異動。定年(60歳)を間近にして、初めての肉体労働を命じられた。出向前は次長だった職位も、非管理職の係長に降格となった。

新村弁護士によると、この工場ではタイムカードがあるのに、記録時間より少ない労働時間を過少申告させていたそうだ。会社は当初、男性の月給は4割減となったものの、残業代を加えると、差額は小さいと説明していたという。しかし、男性側が残業代の未払いを指摘すると、今度は一切残業させないという対応が取られた。

この点について、男性は「残業できなかったのが一番(つらかった)ですね。どんなに忙しくても、帰らされる。パートの人が残業していても、『すいません』と謝って帰らないといけない」と、肩身が狭い思いをしていることを打ち明けた。このほか、パートや外国人技能実習生にも支給された賞与が、男性にだけ出ないなど、嫌がらせは今も続いているという。

今回の労働審判は、(1)男性を出向前の業務管理部に戻し、課長とすること、(2)給与を月額45万円(年俸制)にすること、(3)男性に解決金(金額は非公表)を支払うこと、などという内容。会社側が異議を申し立てれば、裁判に移行する。 会社側は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「担当者が外出している。本日、戻る予定はない」と回答した。

(弁護士ドットコムニュース)

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