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「ポケモンGO」仕事そっちのけで夢中の人続出…バレたらどんなリスクがある?
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「ポケモンGO」仕事そっちのけで夢中の人続出…バレたらどんなリスクがある?

世界的に大ヒットしているスマホアプリ「ポケモンGO」の配信がいよいよ日本でも始まった。大ヒット確実が見込まれるため、日本でも様々な社会問題が起きそうだ。

ツイッターでは、「今日は1日仕事にならないんじゃないか」「社内ミーティングなんだけどみんなポケモンGoやってて仕事にならない」などの投稿があり、仕事中に夢中になっている人たちもいるようだ。

日本人の感覚としては、仕事中にゲームをするのはあまりほめられたことではないが、移動中などに遊ぶ人もいるだろう。もし会社にバレるとどうなるのだろうか。濵門俊也弁護士に聞いた。

●懲戒処分の対象になる可能性

仕事中にやっていることがバレたら、どんな処分を受ける可能性があるのか。

「企業が労働者に対して、『懲戒処分』を課すことができるのは、就業規則に懲戒事由を規定している場合に限ります。およそどんな企業の就業規則にも、『勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと』といった職務専念義務の規定があるでしょう。

また、それとあわせて、職務専念義務に違反した場合、その程度に応じ、(1)けん責、(2)戒告、(3)減給、(4)停職、(5)免職などの処分を可能とする懲戒事由を定めているはずです。ちなみに、公務員の場合は、職務専念義務や懲戒事由が法律によって規定されています」

では、職務専念義務の違反になってしまうということか。

「仕事中に『ポケモンGO』をしていた場合、その労働者の職務怠慢等の懲戒事由に該当する理由があることは明らかでしょう。ただし、うっかり重すぎる処分をしてしまうと、訴訟で問題とされた場合、処分が無効となることがあります。

民間企業の懲戒処分は、『行為の性質及び態様その他の事情に照らして客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合』には、法律上無効になってしまうのです。

いわゆる『クビ』は、懲戒解雇処分のことですが、この処分は、いわば企業からの死刑判決といえます。行為の重大性や、企業秩序に対する深刻な悪影響を及ぼすなど、かなりの程度の『悪いこと』をした労働者に対してでないと、訴訟上処分が無効となるおそれがあります。

そういう観点でみますと、仕事中『ポケモンGO』にどれほど没頭していたかということで判断せざるを得ないです。職務遂行に『重大な支障が出た』といえ、懲戒解雇するに足りる『社会通念上の相当性』が認められるかが問題となります。そうすると、せいぜい、減給処分程度の処分になることが多いのではないでしょうか」

●移動中や休憩中でもダメか?

移動中でもダメなのか。

「通常の移動中であれば、事実上、業務は遂行できません。その時間を利用して、ゲームに興じたことが原因で特段、移動時間やトイレの時間が長くなったといえないような場合、職務専念義務に反したとまではいえないでしょう。

一方、ゲームやりたさのあまり、必要がないにもかかわらず、あえて移動するとかした場合、本末転倒といえますから、職務専念義務に違反したといえます。

ただ、その場合でも実際に、懲戒処分を下すまでに至る場合というのは、そうした頻度が高く、明らかに業務に支障をきたしていることが明白である場合や、一度注意しても改めようとしなかったような場合に限られると思われます」

さすがに休憩中となれば問題ないか。

「休憩中であれば、『休憩の自由利用』(労働基準法第34条第3項)という大原則があります。

休憩中に『ポケモンGO』をやってはならないとするのであれば、この『自由』という概念と競合することとなりますので、ここをクリアしなければいけません。結論としては、企業として無制限に禁止できないだろうと思います。

なぜならば、この自由利用を制限できるのは企業に『合理的理由』があるときに限られるからです。裁判上、休憩時間中に禁止できることとして、『ビラ配布』『政治活動』『飲酒』『会議室等の無断での使用』といったものがあります。

いずれも企業秩序の維持に支障をきたすということがその理由です。

実際には、たとえば、『無断で会議室などを占拠してゲームしている』というような場合、施設管理の観点から禁止することもできるかもしれません。

しかし、『ポケモンGO』のように、主に社外でゲームをする場合には、理由もなくなると考えられるので、禁止は難しいといえます。この場合、風紀が乱れるという主張をする企業経営者の方もおられるかもしれませんが、『どう風紀に影響したのかの根拠や証拠』が必要となるでしょう。ですから、あまり現実的ではないかもしれません」


濵門弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

濵門 俊也
濵門 俊也(はまかど としや)弁護士 東京新生法律事務所
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えております。依頼者の「義」にお応えします。

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