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TCL日本法人の元社員、解雇無効訴え提訴 パワハラで精神疾患に、復職後の時短勤務認めず
会見した女性(左)(2020年8月24日、都内で弁護士ドットコム撮影)

TCL日本法人の元社員、解雇無効訴え提訴 パワハラで精神疾患に、復職後の時短勤務認めず

中国家電大手TCLの日本法人TCLジャパンエレクトロニクス(東京都江東区)に勤務していた中国籍の30代女性が8月24日、解雇の無効とパワハラの慰謝料や未払い賃金など計約1403万円を求め、東京地裁に提訴した。

女性はパワハラが原因で適応障害を発症し、約3カ月間休職。主治医から「当初は4時間程度の勤務から復職可能」と診断されたが、会社側は時短勤務を認めず、自動退職扱いとした。

提訴後、東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見を開いた女性は「リハビリ出勤は病気が治癒していない表れなのでしょうか。それが正当な理由であれば、一度でも精神疾患になってしまったら、もう社会復帰はほとんど絶望的です」と訴えた。

●パワハラと退職勧奨で適応障害を発症

訴状などによると、女性は2018年6月に入社し、中国本社と輸入計画の調整などをする計画物流部に配属された。

入社半年後から元社長による嫌がらせが始まり、当時の副社長や上司からも「日本語わかりますか」など人格否定を繰り返された。19年3月には元社長から退職を迫られ、「退職勧奨を受け入れなかった場合、会社は処分を出し制裁を加える」「会社としてこういう風に追いやっていくつもり」と言われたという。

女性は19年3月末に適応障害を発症し、6月中旬まで休職。約3カ月間の休職を経て、主治医から「当初は4時間程度より開始し、2カ月程度の期間を経て定時勤務とすることが望ましい」と診断された。

しかし、会社側は時短勤務での復職を認めなかった上、休職期間を満了したとして19年10月24日付で自動退職扱いとした。

女性は労働組合に加入し団体交渉をしたが、会社側は「4時間しか働かないなら休職事由が消滅しているとは言えない」と復職を認めず交渉は決裂。今回の提訴に至ったという。

●「リハビリ出勤」は認められるか

訴訟の争点は、時短勤務が前提となっていた女性の傷病は治癒しており、「リハビリ出勤」での復職が有効だったと言えるかどうかだ。

厚生労働省はメンタルヘルス対策における職場復帰支援についてのガイドラインで、「社内制度として試し出勤制度等を設けると、より早い段階で職場復帰の試みを開始することができる」と示している。

女性の代理人をつとめる藤原朋弘弁護士は「使用者に対し、元の職務ではなく別の軽易な業務や配置転換させて傷病の回復を待つ信義則上の配慮を求める裁判例は多く出されている。この趣旨からすれば、時短勤務を検討しないで『休職事由が消滅』しなかったと判断したのは誤り」と指摘。

仮に、復職が不可能だったとしても、パワハラが原因で発症した適応障害であり、「傷病が治っていない間に自動退職扱いとするのは、労基法19条1項により違法だ」と主張している。

女性は「提訴を通じて、リハビリ出勤が一般的になりつつある社会で、まだ取り組んでいない企業や経営者にも問題を是正するよう訴えていきたい」と話した。

TCLジャパンエレクトロニクスは「訴状がまだ届いておらず、内容を確認しておりませんので、現在会社としてのコメントを差し控えさせていただきたいと思います」とコメントした。

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