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佐野SAのストライキが話題、法的にはどんな場合に認められる?
佐野サービスエリア(上り)(C)Google

佐野SAのストライキが話題、法的にはどんな場合に認められる?

東北自動車道の佐野サービスエリア(SA・上り)でフードコートと売店を運営する「ケイセイ・フーズ」の従業員のストライキにより、8月14日未明から突然、店舗が営業を休止したことが、大きな話題になった。

事態は動き続けているが、一般論として、ストライキが法的に認められるためには何が必要なのか。

●「正当な争議行為」ならば刑事・民事責任は免責される

ストライキなどの争議行為をおこなうことは、憲法28条によって保障されている権利だ。「正当な争議行為」であれば、刑事責任、民事責任ともに免責される。つまり、処罰されたり、賠償請求されたりしないということだ。

たとえば、建造物侵入、威力業務妨害などがおこなわれたとしても、「正当な争議行為」であれば、罪に問われないことになる。ただし、暴力をふるった場合は「正当」とはいえないことから、処罰の対象になる。

今回のストライキでSAが営業休止したことによって、会社には損害が発生している。しかし、「正当な争議行為」によって発生した損害については、使用者は労働者に賠償を請求することはできないのだ。

また、ストライキをおこなった従業員を懲戒処分にしたり、不当な配置替えをするなどの「不利益取り扱い」についても禁止されている。

●「正当」かどうかを判断する4つのポイント

しかし、従業員のストライキが日常的に起きれば、会社の経営は回らなくなる。そのため、ストライキが「正当な争議行為」と認められるか否かが重要なポイントとなる。

正当な争議行為として認められるためには、主体・目的・手続・態様が正当であることが必要だ。

まずは主体から考えると、労働組合法1条2項(刑事の免責について規定)と8条(民事の免責について規定)は、あくまで労働組合の行為について規定したものだが、労働組合以外の労働者の団体についても、正当な争議行為であれば、団体行動権を保障する憲法28条の趣旨から、刑事・民事の免責が認められる。

一方、争議行為が「団体交渉のための圧力行為」といえるためには団体交渉の当事者となりうる者が主体となって行うものでなければならないため、労働組合の組合員の一部が、組合全体の意思に基づかずに実行したいわゆる「山猫スト」には正当性が認められないとされている。

目的については、労働条件や労使関係の運営に関する事項で、使用者が決定できるものについて要求するためのストライキであれば、正当性が認められる。例えば、賃金や労働時間、職場環境、採用・解雇、福利厚生、人事考課、人事異動などが挙げられ、個別具体的に判断される。一方、政治的主張や国に立法措置を求めるためのストライキなどは認められない。

手続や態様も重要だ。ストライキを実施する前には、手続きを踏まなければならない。団体交渉をおこなわずに実施したストライキには正当性が認められない可能性がある。ストライキの予告については、予告をしなかったというだけで、ただちに正当性が否定されるわけではなく、「その正当性の有無は、それが予告なしに行われたことにより、使用者の事業運営に混乱や麻痺をもたらしたか、そしてそのような混乱が意図されたかなどを個別具体的に判断して決するほかない」(菅野和夫「労働法」より)。

また、労働組合法は「いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない」と規定している(労働組合法1条2項)。

今回の佐野SAのストライキについては、状況が不明確な部分もあり、判断は難しいが、お盆期間中に実行したことで、社会に大きなインパクトを与えたことは間違いない。

【8月22日16:20】8月16日に公開した記事で、正当なストライキが認められるための要件として、労働組合に限定されていることなどを記載しておりましたが、誤りや誤解を招く表現があったため、記事を大幅に修正いたしました。お詫び申し上げます。

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