「出産して2カ月で夫が仕事をやめ、生活のために風俗で働くことを強いられました」。あまりに悲痛な体験談が弁護士ドットコムニュース編集部に寄せられた。
投稿者は、夫が出産間もなく仕事を辞めたため、家賃も払えないほど生活が追い込まれてしまったと語る。そうした状況で、夫に「風俗で働いてくれないか?」と頼まれ、生活のために風俗の仕事を始めたそうだ。
しかし、夫は投稿者の収入をあてにして1年以上も無職の状態に。夫が再就職してその収入で生活が回るようになったタイミングで、投稿者は風俗の仕事を辞めた。ところが、それから数年すると、恩を仇で返すかのように、夫は「風俗は仕事じゃない」「浮気だ、不倫だ」などと言いだしたという。
このような場合でも、風俗の仕事は「不貞行為」や離婚理由として認められてしまうのか。理崎智英弁護士に聞いた。
●形式的には「不貞行為」だが・・・
ーー仕事としての「風俗」は、不貞行為に該当するのでしょうか
「離婚事由としての『不貞行為』(民法770条1項1号)とは、配偶者以外の異性と性行為をすることを指します。たとえ仕事とはいえ、風俗店で客と性行為をすることも、配偶者以外の異性と性行為をすることに変わりはないので、形式的には妻の行為は『不貞行為』に該当します」
ーーただ、今回は夫に「風俗で働いて」と言われたそうです
「今回、夫は、妻が自分以外の異性と性行為をすることを許容していたと言えますので、『不貞行為』には該当しないと考えます。
さらに、夫が妻の不貞行為を指摘したのは、妻が風俗の仕事を辞めてから数年後ということです。妻が風俗の仕事を辞めた後も、夫は妻との婚姻生活を継続していることから、夫は妻の風俗の仕事を許容していたと言えます。今回のケースでは、数年前の風俗の仕事を理由にした離婚を裁判所は認めないでしょう」