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エイプリルフールに「嘘のプロポーズ」をされたら、慰謝料を請求できる?

エイプリルフールに「嘘のプロポーズ」をされたら、慰謝料を請求できる?

一年で一度、ウソをつくことが堂々と許されるエイプリルフール。毎年4月1日になると、身近な人との会話からメディアの報道にいたるまで、世の中はさまざまなウソであふれかえる。多くの人はその特別な日を楽しんでいるが、なかには辛辣なウソで傷つけられる人もいるようだ。

Yahoo!知恵袋に寄せられた相談によると、ある女性は交際している男性から「俺と結婚してくれ!がんばって給料3ヶ月分の指輪買ったんだ」と言われ、指輪をプレゼントされた。彼女はあまりのうれしさに涙を流したほどだったが、帰宅後に彼氏から電話がかかってきて、「エイプリルフールにプロポーズするバカがどこにいるんだよ!その指輪300円のおもちゃだから」と言われたのだという。彼女はそれを聞いて、大いにショックを受けたのだそうだ。

このようにエイプリルフールに「プロポーズ」され、女性がひどく傷ついてしまった場合、慰謝料を請求できるだろうか。それともエイプリルフールだから、そんな要求は通らないのだろうか。中村憲昭弁護士に話を聞いた。

●「笑いごとで済まない内容」の場合は、慰謝料や損害賠償の対象になり得る

「慰謝料を請求できる余地は十分あります」。中村弁護士はズバリ、そのように答えてくれた。なぜ、そのように言えるのだろうか。その説明は次のようなものだ。

「エイプリルフールで嘘をつくことが許されるのは、社会通念上、4月1日の嘘は、他愛もない冗談であれば笑ってすませましょうという暗黙の了解があるからです。

いくらエイプリルフールであっても、オレオレ詐欺を犯せば当然罰せられるわけですし、ご先祖様のたたりを解消するとだまして高価な壺を売り付ければ、やはり捕まります。そうしないと、4月1日は詐欺師のお祭りになってしまいます。

どこまでの嘘が許されるかは、社会通念、つまり常識によります。常識で考えて笑って済ませることができる嘘であれば許されますし、逆に笑いごとでは済まない内容であれば、慰謝料や損害賠償の対象になり得るでしょう」

●「人を傷つけるような嘘」はできるだけ慎みたい

このように一般論を述べたうえで、中村弁護士は「エイプリルフールのプロポーズ」について、次のように考察する。

「今回の事例でも、『絶対に結婚など考えられない関係』『プロポーズしたら一笑に付されて終わることが当事者間で明らかな関係』であれば、笑いごとで済まされる可能性はあります。

しかし、妻子ある男性と不倫していて、口では『結婚できないことは判ってるの』と言っていたとしても、万が一の可能性を夢みてときめくのが女性です」

このように説明して、「エイプリルフールのプロポーズ」であっても、「笑いごとでは済まない内容であれば、慰謝料を請求できる可能性があります」と指摘している。

「そもそもエイプリルフールは、笑って済ませる楽しい行事として楽しむべきものですから、人を傷つける内容の嘘はできるだけ慎みたいものです」。この中村弁護士のアドバイスのように、4月1日は、人を笑わせて幸せな気分にさせるような嘘をつくようにしたいものだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

中村 憲昭
中村 憲昭(なかむら のりあき)弁護士 中村憲昭法律事務所
離婚・相続、交通事故など個人事件と、組織が万全でない中小企業を対象に活動する弁護士。裁判員裁判をはじめ刑事事件も多数。その他医療訴訟や建築紛争など専門的知識を要する分野も積極的に扱う。

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