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夫を悩ませる「実家依存」の妻たち…イベントのたびに帰省、離婚を検討する人も
写真はイメージです(Fast&Slow / PIXTA)

夫を悩ませる「実家依存」の妻たち…イベントのたびに帰省、離婚を検討する人も

実家依存の妻と離婚したいーー。弁護士ドットコムに、実家依存の妻に悩まされているという相談が複数寄せられています。

ある相談者(20代・男性)は、ことあるごとに実家に帰る妻に不満を抱くようになり、離婚を検討するようになりました。

相談者によると、妻は結婚当初から、最低でも週に1回は実家に帰っていました。夫婦が暮らしている家から妻の実家までは往復250キロ。妻が「実家に帰りたい」と言うたびに、相談者が車で送り迎えしていたそうです。

妊娠・出産後はさらに実家に行く回数が増え、滞在期間も長くなりました。妻はクリスマスや初節句などのイベントごとがあるたびに、子どもを連れて実家に帰省。相談者はイベントごとを子どもと一緒に祝うことができなかったといいます。

「結婚1年半で妻と一緒に過ごした期間は4割です。6割は(妻の)実家で過ごされました」と相談者は複雑な思いを綴っています。

妻の実家依存は離婚の理由になるのでしょうか。坂野真一弁護士の解説をお届けします。

●夫婦には同居、協力扶助義務がある

ーー妻の実家依存があまりにもひどい場合、どのように解決すべきでしょうか。

夫婦にはお互いに同居、協力扶助義務があります(民法752条)。ですから、夫婦間、場合によっては、妻の両親を交えて、話し合いで解決すべき問題だといえるでしょう。

お互いに育ってきた環境が異なるわけですから、双方が「普通」と考える常識も価値観も当然違うことがあります。結婚とは、そのような双方の違いを、双方が歩み寄りながら溝を埋めて、その上で夫婦共通の価値観を育んでいく作業を含んでいるものだと考えるべきです。

もしそれでも解決しそうにない場合、離婚が視野に入ってくるでしょう。話し合いによる協議離婚の場合であれば、実家依存が理由であっても離婚は可能ですし、調停の場でも双方の話し合いがつけば離婚できます。

ですが、話し合いで解決できない場合は、裁判離婚の手続きを取らざるを得なくなります。この場合、裁判上の離婚原因が認められないと離婚を認める判決にはなりません(民法770条1項1号~5号)。

●妻の実家依存を理由に離婚が認められることはある?

ーー妻の実家依存は離婚の理由として認められますか。

妻の実家依存は、原則として民法770条1項1号~4号の事由に該当しませんので、結局同項第5号の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」(以下「5号事由」といいます。)があるかが問題となります。

「5号事由」は、婚姻関係が破綻して、婚姻の本質に応じた共同生活の回復の見込みがない状況にあることを意味します。

婚姻関係が破綻しているかどうかの判断は裁判官の裁量に任されますが、婚姻中の行為や態度、子どもの有無や状態、婚姻継続の意思の有無、双方の年齢、健康状態、資産状況、性格など婚姻生活全体の一切の事情を考慮することになります。

婚姻継続の意思も疑われるほどあまりにも妻が実家に依存して、円満な夫婦関係の実現努力の態度がまったく見られず、その結果、夫婦関係が悪化し婚姻関係が破綻した場合は、5号事由に該当する(裁判上の離婚原因となる)といえる場合もあるでしょう。

(弁護士ドットコムライフ)

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プロフィール

坂野 真一
坂野 真一(さかの しんいち)弁護士 ウィン綜合法律事務所
ウィン綜合法律事務所 代表弁護士。京都大学法学部卒。関西学院大学、同大学院法学研究科非常勤講師。著書(共著)「判例法理・経営判断原則」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」(いずれも中央経済社)、「増補改訂版 先生大変です!!:お医者さんの法律問題処方箋」(耕文社)、「弁護士13人が伝えたいこと~32例の失敗と成功」(日本加除出版)等。近時は相続案件、火災保険金未払事件にも注力。

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