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女性元社員「マタハラ」主張も認められず、雇止め有効に 一審と逆転…東京高裁
会見した会社社長(2019年11月28日、編集部、都内)

女性元社員「マタハラ」主張も認められず、雇止め有効に 一審と逆転…東京高裁

育児休業(育休)取得後に、正社員から契約社員への雇用形態の変更を迫られ、その1年後に雇止めされたのは不当だとして、語学スクール運営会社で働いていた女性(30代)が、会社に地位確認などを求めた訴訟の控訴審判決が11月28日、東京高裁であった。

会社側の主張が大幅に取り入れられ、一審とは異なり、雇止めが有効とされた。

(編集部追記・2020年12月10日)
最高裁第三小法廷は2020年12月8日付で女性側の上告を退ける決定を行い、会社側勝訴の判決が確定した。

●いったいどんな判決だった?

裁判の争点は大きく、(1)女性は正社員の地位にあるか、(2)雇止めは有効か、(3)会社の対応は正当と言えるか、(4)女性が一審の提訴時(2015年10月)に開いた記者会見が会社への名誉毀損に当たるかーーの4つだった。

一審は、女性に正社員の地位は認めなかったが、雇止めは無効とし、会社の不誠実な対応などは不法行為にあたるとした。また、記者会見は名誉毀損にあたらないとした。

一方、高裁(阿部潤裁判長)は、一審同様に女性に正社員の地位を認めなかったうえ、雇止めも有効とした。また、記者会見は名誉毀損にあたるとし、女性に55万円(弁護士費用含む)の支払いを命じた。

判決後、原告の女性は東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見を開き、「会社が作った落とし穴に落とされたような気持ち。働き続けたいと思った親が働き続けられる社会に変わってほしい」とした。

一方、会社側も会見を開き、「20人規模の会社でできる限りのことをやったということを認めていただけたと思う」とコメントした。

●一審では雇止めは無効、正社員の地位は認めず

判決書によると、女性は2008年に「ジャパンビジネスラボ」(東京都港区)に正社員として入社。英語コーチとして働いていた。

女性は2013年に出産し、育休を取得。保育園がみつからずに育休を6カ月延長したが、その後も子どもの預け先はみつからなかったという。

そこで、会社に「本人が希望する場合は正社員への契約再変更が前提」と説明を受けたため、2014年9月1日に週3日勤務の契約社員となる労働契約を交わした。

その翌日に女性は契約社員として職場に復帰したが、数日後に保育園がみつかったとして、正社員への復帰を希望。会社はこれに応じないまま、1年後に雇止めとなった。

●一審判決を受け、双方が控訴

一審の東京地裁(阿部雅彦裁判長)は、女性が会社と締結した「契約社員雇用契約」は、正社員契約を解約し、新たな契約社員の雇用契約を締結する合意であるとした。

また、「本人が希望すれば正社員に変更する」ことが条件の契約(停止条件付契約)を締結したとは認められないとした。

さらに、当時の女性の状況から、ただちに女性に不利益な合意とまではいえないなどとし、妊娠・出産、育児休業等を理由とした解雇などの「不利益な取扱い」を禁止する均等法9条3項、育介法10条に違反しないとした。

一方、雇止めは無効であり、会社の不誠実な対応などは不法行為にあたるとして、会社側に慰謝料100万円の支払いなどを命じていた。

女性と会社の双方が控訴していた。

●女性は「最高裁に進むことになると思う」

東京高裁は一審とは異なり、会社が禁止していたのに女性が執務室内で無断録音したこと、「事実とは異なる情報」をマスコミに提供したことなどをあげ、女性には「雇用の継続を期待できない十分な事由がある」とした。

原告弁護団の圷(あくつ)由美子弁護士は「録音がなければ、労働者は立証できません。会社が録音に関して規律を設け、注意をすれば、雇止めとなってしまうことになります。また、記者会見は労働者が対抗でき、声を上げることができる場面」と判決を疑問視。

女性は「このままでは時代に逆行してしまう。今後の方のためにも最高裁に進むことになると思う」と語った。

一方、会社側は「安堵している。(上告については)相談して決めたい」とした。

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