「アダルト動画の撮影」が趣味ーーそんな男性から「人妻のモデルさんに出演してもらったら、旦那さんに『不貞行為』として訴えられますか?」という相談が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。
男性は、ネットの掲示板でアダルト動画の出演女性を募集し、応募してきた人にモデル料を支払って、あくまでも個人の趣味として、撮影しているのだという。これまでは全員が未婚の女性だったが、最近、既婚女性からの応募があったそうだ。相談者の男性は、この人妻を撮影したいと考えているが、「旦那さん」の存在が気がかりだ。
はたして、恋愛感情が双方にない「お金のため」の行為であっても「不貞行為」となるのだろうか? 小澤和彦弁護士に話を聞いた。
●出演料の支払いを受けて「演技を提供する」契約
「結論的には、この人妻モデルの旦那さんから、不貞関係があったことを理由とする慰謝料を請求されるということはありません」
小沢弁護士はそう指摘した。
「アダルト動画の出演は、あくまでも出演料の支払いを受けて、その代わりに演技を提供するという契約関係です。いわゆる『不貞』の概念には当てはまりません。
たとえば、不貞関係を内容とするテレビや映画に女優さんや男優さんが出演し、実際に不貞の場面(性的な場面を含む)を演じたところで、それを不貞と言えるのかと考えればわかりやすいと思います」
●出演契約の内容によっては「損害賠償請求」も
「慰謝料請求の根拠となるような違法性のある『不貞行為』について、裁判上は、次のように判断しています。
『夫婦の一方の配偶者と肉体関係をもった第三者は、故意または過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つにいたらせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫または妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務がある』(1979年3月30日最高裁判所判決)
しかし、アダルト動画出演は、あくまでも『契約関係』に基づく行為です。性行為ないし性行為類似の行為があっても、出演契約に基づく行為であり、違法性がないといえます」
では、相談者が人妻モデルと契約することに、何の問題もないと言えるのだろうか。
「アダルト動画の出演契約の内容によっては、この人妻モデル自身が『ここまでするとは思わなかった』『こんな場面は嫌だった』という可能性もあります。その場合、別途、人妻モデル自身からの契約違反による損害賠償請求、または不法行為による慰謝料請求の対象になりえます。その点は、注意しなければならないでしょう」