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「誹謗中傷の放置で民主主義が壊れる」 有志の弁護士やジャーナリストが危機感
ネットワークのメンバーたち(2020年6月9日/弁護士ドットコム撮影)

「誹謗中傷の放置で民主主義が壊れる」 有志の弁護士やジャーナリストが危機感

事実にもとづかない誹謗中傷や悪意ある攻撃にさらされている社会運動家たちを支えようと、有志の弁護士やジャーナリスト、労働組合員が6月9日、ネットワークを発足した。この日、安倍晋三首相、高市早苗総務相、森雅子法相あてに「民主主義社会をむしばむネット上の誹謗中傷を防ぐための要望書」を提出する。

政府がネット上の誹謗中傷対策について議論を加速させる中、ネットワークは要望書で、(1)発信者情報開示のための要件を下げて、開示までのプロセスを簡略化すること、(2)プロバイダ事業者に対する罰則や説明責任の強化、(3)公益通報者保護の強化――をもとめている。

●ネット攻撃に対する法的措置に時間やコストがかかる

発足したのは、「SNSにおける労働運動・社会運動に対するヘイト攻撃に対抗するネットワーク」(SNSOS)。

発起人は佐々木亮弁護士、嶋崎量弁護士、鈴木剛さん(東京管理職ユニオン執行委員長)、竹信三恵子さん(ジャーナリスト)、棗一郎弁護士、南彰さん(日本マスコミ文化情報労組会議議長)の6人。作家の雨宮処凛さんやジャーナリストの伊藤詩織さん、思想家の内田樹さんら50人が賛同人となっている。

ネットワークは、要望書の中で「女性運動家に対する性差別的な中傷」「労働組合を反社であるかのようにレッテルを貼るデマ宣伝」「移住労働者の権利問題に取り組む人たちに対する差別排外主義的な攻撃」「弁護士に対する不当な大量懲戒請求の扇動」をとりわけ問題視している。

こうしたネット上の攻撃に対する法的措置がはん雑で、時間やコストがかかり、泣き寝入りせざるをえない人も少なくないため、「結果として民主主義が破壊され、ファシズムにつながる危険性を内包している」と危機感を表明している。

●「表現の自由を履き違えている」

ネットワークの発起人たちはこの日、院内で記者会見を開いた。

南さんは「『表現の自由』を履き違えて、他人の人権を侵害する誹謗中傷が氾濫している。その中で、社会を良くしようと声を上げたり、活動している人たちが心が折れていく。そういう状況をかんがみて、ネット上の誹謗中傷としっかり戦って、悩み苦しんでいる人たちを支えていかないといけない」と述べた。

賛同人の一人、雨宮さんは「モノ言う女に対して、集団リンチして黙らせないといけないと勝手に思いこんでいる人たちがいる。向こうには、あいつらから男社会を防衛しないといけないという(ゆがんだ)正義感や被害者意識もある。女になら、何をやっても良いと思っているように感じる」と語った。

●「時間を短縮することはメリットしかない」

佐々木亮弁護士 佐々木亮弁護士(2020年6月9日/弁護士ドットコム撮影)

ブラック企業被害対策弁護団の代表をつとめる佐々木弁護士は、ブログ「余命三年時事日記」を起点とする不当な大量懲戒請求を受けた。「普通に弁護士していたところ、突如矛先が自分に向いた。自分の属性が、重い被害を受けている類型じゃないからと言って、まったく無関係じゃないというのが、インターネットの攻撃の怖さだ」と話す。

佐々木弁護士は、ブログ主に関して発信者情報開示請求をおこなっている。「通信の秘密や、匿名性の権利のようなもの、表現の自由との整合性をどうとるか、考え続けないといけないが、(発信者情報開示のプロセスを簡略化して)時間を短縮することはメリットしかないと思っている」と訴えた。

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