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「あの店には新型コロナの店員がいる!」 不安煽るデマツイート、違法になるおそれ
不安とデマが広がっている(プラナ/PIXTA)

「あの店には新型コロナの店員がいる!」 不安煽るデマツイート、違法になるおそれ

新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、インターネット上に不確かな情報が出回っている。ツイッターなどSNSでは、デマといえるようなものも混じっており、市民の混乱を広げている。

たとえば、若者に人気のファッションブランドの原宿店で『新型コロナウイルスの店員がいる』といった不確かな情報も流れたが、同店はツイッターで「そのような事実はない」と否定している。

不安などから、そうしたデマが出回っているのかもしれないが、場合によっては大きな影響を及ぼすこともある。法的には問題ないのだろうか。インターネットの法律にくわしい清水陽平弁護士に聞いた。

●他人に迷惑をかける表現は規制される

「一般論として、言論は原則として保護されなければならない、とされています。いわゆる『表現の自由』と呼ばれるものです。そのため、仮にデマであっても保護される、というのが原則ではあります。

デマと一言でいっても、単なる冗談のようなものから、深刻な影響を与えるものまで、幅広いものがあります。

たとえば、エイプリルフールに流されるウソも一種のデマと言えますが、これは多くの人が『ネタ』として楽しむことが予定されているでしょう。それを見た人も、一瞬信じるものもあるかもしれませんが、最終的には『ネタ』として見ているわけです。そのため、このようなものは当然許されるということになります。

一方で、いくら『表現の自由』があるといっても、他人に迷惑をかけるようなものは、規制される必要があります。たとえば、他人の名誉を毀損するものや、他人の業務を妨害することになる表現です。

『新型コロナウイルスの店員がいる』といったデマの場合、指定感染症に罹患(りかん)する可能性が高い店に行きたいと思う人は通常いないと思います。このデマによって、店への抗議の電話が殺到したという状況があったり、来店が減っていれば、業務妨害罪が成立することになります。

また、たとえばですが、『新型コロナウイルスは、実は◯◯会社が起こしたバイオテロだ』といった陰謀論が持ち出されたケースであれば、その会社の社会的評価を低下させることになります。この場合、名誉毀損罪が成立することになるでしょう。

人の不安を煽るようなデマは、不安を煽るがゆえに、拡散のスピードが速いと言われています。一人ひとりの冷静な対応が、デマ拡散の抑止になります。冷静な対応をするよう心掛けてほしいと思います」

プロフィール

清水 陽平
清水 陽平(しみず ようへい)弁護士 法律事務所アルシエン
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022~2023年) の構成員となっている。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を行っている。

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