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ネットのヘイト投稿、罰金30万円の略式命令 在日コリアンの女性「社会正義がやっと示された」
会見に臨む崔さん(右)と師岡弁護士。(2019年12月27日/弁護士ドットコム撮影)

ネットのヘイト投稿、罰金30万円の略式命令 在日コリアンの女性「社会正義がやっと示された」

川崎市在住の在日コリアン3世の女性、崔江以子(チェ・カンイヂャ)さんがネット上で執拗に差別的な攻撃を受けていた問題で、川崎区検は12月27日、藤沢市の男性(51)を神奈川県迷惑行為防止条例違反の罪で略式起訴した。川崎簡裁は同日、男性に罰金30万円の略式命令を出した。

●崔さん「社会正義がやっと示された」

刑事処分を受けて、崔さんと代理人弁護士らが12月27日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。崔さんは「ネット上の匿名の書き込みであっても特定され、決して許されず、刑事責任を負わされる。その社会正義がやっと示されました」と話した。

差別の根絶を訴えて活動する崔さんに向けた執拗なツイッターの投稿は、ヘイトデモの被害者として国会で参考人として発言した2016年3月前後から始まった。

特に「極東のこだま」という匿名アカウントからの攻撃は過激で、「庭の植木に使うナタを買ってくる予定。川崎のレイシストが刃物を買うから通報するように」などと書き込むこともあれば、崔さんの息子の実名を出して攻撃することさえあった。

2018年5月、神奈川県警川崎署はアカウントを使っていた男性を脅迫の疑いで書類送検したものの、2019年2月になって横浜地検川崎支部が不起訴処分に。弁護団は同日、一連のツイートが神奈川県迷惑行為防止条例違反にあたるとして、同条例違反の疑いで2度目の刑事告訴をしていた。

会見に同席した師岡康子弁護士によれば、差別の問題について同条例で処罰されたのは、日本初のこと。

脅迫罪では不起訴だったが「被害者救済の方法が広がった。刑事処罰は大きい」と意義ある結果だと評価する。しかし、今回の結果のみをもってヘイト投稿の被害者の救済にはならない。「発信者の特定に時間がかかった」問題なども指摘した。

●崔さんに笑顔はなし。刑事処分までに長い時間

最初のヘイト投稿がなされてから男性の取り調べが行われるまで1年9カ月。投稿から刑事処分が出るまでの3年半は長かった。子どもを守るためには、外に出かけるのにも行動が制限されるなど、実際の生活にも影響があったという。

無責任な差別投稿への抑止効果が期待される。その一方で崔さんは涙声でこうも述べる。「他の被害を受けている人たちに『後に続いて』と言うことは非常に難しいです。差別されて声をあげることによる二次被害は、とても厳しいと3年半で実感しています。個人の力には限界があります」

一連のツイートのうち2016年6月〜17年9月に投稿された「民族性モロ出しの小賢しさはムカつくぜ」など4件の投稿が「その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと」(同条例11条第7号)に該当すると判断された。

師岡弁護士は「男性はやったことは認めているが『差別をするつもりはなかった』と言っている」と話した。

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