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マイナンバーカード旧姓併記、200億円かけたのに「がっかり」 口座の旧姓使用は銀行次第
右は現在の総務省のパンフレット、左は旧パンフレット(画像をもとに弁護士ドットコムニュース作成、2019年10月30日)

マイナンバーカード旧姓併記、200億円かけたのに「がっかり」 口座の旧姓使用は銀行次第

住民票とマイナンバーカードに旧姓を併記できる制度が11月5日、スタートした。これは、政府が結婚後も仕事で旧姓使用する女性の活躍を推進する目的のため、地方自治体のシステム改修費など約200億円をかけて進めてきたもの。

しかし、多くの人が期待していた銀行口座の旧姓利用について、実際にフタを開けてみたら「銀行の対応次第」とわかり、「使えない」という失望の声も上がっている。

●9月に「後退」した総務省のパンフレット

「保険・携帯電話の契約や銀行口座が旧姓のまま引き続き使えます!」。これは、総務省が配布していた旧姓併記に関するパンフレットに記載されていた説明だ。しかし現在は、「各種の契約や銀行口座の名義に旧姓が使われる場面で、その証明に使えます」という説明に変更されている。

総務省に取材したところ、「旧姓をマイナンバーカードなどに併記すると各種の証明に使えることを、『旧姓のまま引き続き使えます』という表現にしていましたが、そのまま旧姓が使えるように見えるというご指摘をいただいた」という。パンフレットは全国自治体に送付していたが、指摘を受け総務省は9月にパンフレットを修正した。

実際に銀行口座は旧姓で使えるのか。総務省によると、「以前から政府が全国銀行協会に働きかけをしてきたが、法律で決まっているわけではなく、対応はそれぞれの銀行による」といい、進んでいないのが現状だ。

●銀行口座のシステム改修には「数億円」

これに対し、Twitterなどでは、「何百億円かけても銀行口座の旧姓使用はできないの?」「旧姓併記しても旧姓のまま銀行口座使えないなら、旧姓と戸籍姓をさらすだけの代物」「旧姓併記は無駄。早く選択的夫婦別姓制度にしてほしい」といった失望の声が早くも上がっている。

なぜ、銀行口座の旧姓使用が進まないだろうか。

選択的夫婦別姓を地方議会にはたらきかけている「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」のメンバーで、銀行員の「なぎ」さん( https://chinjyo-action.com/bank/ )によると、銀行の予算が関係しているようだ。

政府から主要な銀行や全国地方銀行協会などに対し、旧姓でも口座が利用できるようにしてほしいという協力要請があったため、「なぎ」さんの銀行でもシステム改修を検討したところ、「数億円」の予算がかかることがわかったという。

「なぎ」さんによると、毎月さまざまな企業の給与振込を行なっているが、指定の口座番号と名義が一致しないデータが出てくるといい、その大半が「改姓によるもの」だったそうだ。

会社には改姓の届け出をしているものの、銀行で口座の名義変更していないケースが多いのでは、と「なぎ」さんは推測。「選択的夫婦別姓制度があって、旧姓に法的根拠さえ与えられれば、全く必要ない投資」と指摘している。

なお、総務省に確認したところ、マイナンバーカードなどに旧姓併記する場合は、それぞれの自治体の役所で戸籍謄本を提示する必要があるが、戸籍謄本を取得する手数料は、旧姓併記を希望する人の自己負担となる。

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