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不自由だらけの「表現の不自由展」 金属探知機で厳戒警備、外では河村市長の抗議行動
入場にあたっては、金属探知機でチェックされた(記者クラブ非加盟社代表撮影)

不自由だらけの「表現の不自由展」 金属探知機で厳戒警備、外では河村市長の抗議行動

愛知県内で開催されている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」で、従軍慰安婦を象徴する「平和の少女像」などが展示されていたため、激しい抗議を受けて中止となっていた「表現の不自由展・その後」が10月8日午後、再開した。

この日、「表現の不自由展」への入場は入れ替え制で2回のみ。1回30人という入場枠を求め、のべ約1400人が抽選に殺到した。再開にあたっては厳しいセキュリティチェックが行われ、メディアの入場も規制されるなど、アート展とは思えないような厳戒な警備体制が敷かれた。

また、再開とほぼ同時に会場周辺では、かねてより展示に反対していた名古屋市の河村たかし市長が支援者らと一時、「座り込み」を行い、「天皇御真影を燃やすな」というプラカードとともに抗議活動をした。

河村市長の「座り込み」に対し、愛知県の大村秀章知事はTwitterで即座に応酬。「まさか、こんなことをするなんて。衝撃です。制止を振り切って、県立美術館の中のフロアを占拠して、誹謗中傷のプラカードを並べて、美術館の中で叫ぶ。芸術祭のお客様の迷惑も顧みず。常軌を逸してます。厳重に抗議します」とツイートした。

●ものものしい雰囲気の中で、約2カ月ぶりに展示再開

「表現の不自由展」は愛知芸術文化センター(名古屋市)で開かれている。この日は、午後2時10分、午後16時20分と2回にわたって抽選が行われた。1回目の抽選には30人の枠に対して709人が並んだ。午後1時40分に会場前のホールで当選者番号が発表されると、落選した人たちががっかりした様子で「せっかく来たのに残念」「倍率が高過ぎてだめだった…」などと話していた。2回目の抽選にもやはり30人の枠に対して、649人が並んだ。

当選した30人は、会場入り口で貴重品以外の手荷物を預け、金属探知機によるセキュリティチェックを受けた後、午後2時10分に入場。8月3日以来の展示再開となった。これに関連して、「表現の不自由展」の展示再開を求め、トリエンナーレ内で抗議のために展示を中止していた作家13組の作品も同日朝からオープンとなった。

alt 抽選には約1400人が殺到した(弁護士ドットコムニュース撮影)

alt 記者クラブ非加盟社代表撮影

一方、「表現の不自由展」が再開されると同時に、愛知芸術文化センター前では、かねてより展示に反対していた名古屋市の河村たかし市長が支援者らと「座り込み」をする場面もあった。「天皇御真影を燃やすな」といったプラカードを掲げ、メディアや市民の前で抗議活動を行なった。

舞台裏では、厳しいメディア規制も敷かれた。8月3日の展示中止以来、「表現の不自由展」は報道陣に公開されていない。この日も、国内外のメディアが殺到したが、会場内での取材範囲は限られたものとなったため、一時は新聞社やテレビ局の記者から取材方法をめぐって怒号が飛ぶなど、混乱もあった。会場スタッフの顔もセキュリティのために撮影禁止だった。

韓国からのメディアも多く取材に訪れていた。東京に駐在しているという男性記者の1人は「表現の不自由展が展示中止になったニュースは、韓国の国内でも注目されています」と話していた。

alt 記者クラブ非加盟社代表撮影

●「再開されたことはとても良かった」

この騒動を地元の人たちはどう見ているのだろうか。この日、1回目の抽選に漏れたという名古屋市内の大学生たちに話を聞いた。

20代の女性は、「表現の不自由展」を見ようと思った理由について、「オープンしてすぐ見ていた友人に勧められたのと、慰安婦をテーマにした『主戦場』という映画を見て、慰安婦像に関心を持ちました」と語る。今回の騒動に対して「悲しかった」と話す。

「これまで、あいちトリエンナーレを見て、名古屋の街全体がアートに包まれていてとても素敵なイベントだと感じていたので、今年はこのような事態になって、公開が中止される展示が続出して悲しかったです。今日から全ての作品の展示が再開されて、残り開催日数が少ない中ですが、再開されたことはとても良かったと思う。

『表現の不自由展』の中止や再開なども含めて、様々な社会問題について考えるきっかけになるとても良い機会でした」

また、「一度自分の目で作品を見て確認したかった」という20代男性は、「芸術が検閲される、というのが表現の自由を奪っているなと思いました。見たくない人は見なければ良い」と話していた。

一方、河村市長の「座り込み」に対しては、「とても短時間なので、政治的なパフォーマンスだなという印象が強い」「いつものことだけど、名古屋弁が必要以上にキツくて、名古屋で生まれ育った市民でも何言ってるのか聞き取れない」と冷ややかだった。

あいちトリエンナーレ事務局によると、10月9日以降の「表現の不自由展」の鑑賞については、公式サイトに情報が掲載される予定という。

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