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行政の指導も振り切る「マリカー」、2年後に安全規制適用…シートベルト義務付け
公道を走るマリカー社のカート=東京都内

行政の指導も振り切る「マリカー」、2年後に安全規制適用…シートベルト義務付け

国土交通省は4月27日、「マリカー」などの公道を走るカートを対象とする規制策を発表した。高い位置にテールランプをつけ、シートベルトの装備を義務づけるなどの内容。「猶予」として規制適用までは2年の時間を置く。外国人観光客らに人気のマリカーの運命やいかに。

マリカーは、任天堂の名作ゲーム「マリオカート」を彷彿とさせる。東京や大阪の中心部を集団で走っていて話題だ。外国人観光客らがマリオやルイージなどのコスチュームに身を包み、何台も連なって走行を楽しんでいる様子を見かけた人もいるだろう。もちろん任天堂とは無関係。サービスを運営するマリカー社に対し、著作権侵害などの訴えを起こしている。

●車体小さく、相次ぐ事故

歩行者の立場から見れば、「へぇ、変わったことやってるな」と注目する程度で済むのかもしれないが、同じ公道を走っている車からしたら危なっかしくてたまらない。「車体があまりにも小さくて、特に大型トラックなどからは視認することが難しい」(国土交通省自動車局技術政策)。

しかも、死亡事故は確認されていないものの、ここのところ事故が相次いでいる。4月30日には東京・六本木で、シンガポール国籍の30代女性が運転するカートが、飲食店の看板に接触。運転していた女性はケガを負い、病院に搬送された。このとき、5台のカートが連なって走行し、2台目だった女性のカートが車道からはみ出て歩道に乗り上げたという。

●国交省「本来は直ちに規制したかったが」

国交省ではこれまで、地方部局の運輸局を通じ、マリカー社に対して自主的に安全対策を講じるよう指導をしてきた。ただ十分な改善がみられないと判断。2017年から有識者による検討会で議論を重ね、規制の強化に乗り出すことを決めた。

4月27日に国交省が発表した規制(道路運送車両の保安基準等の一部改正)の概要は、(1)地上から1m以上の高さで、前後左右から見て一定の面積が視認できる構造とする(2)テールランプを車体の最も高い位置付近(地上から高さ1m以上)に取り付ける(3)シートベルトをつける(4)頭部の衝撃を守るためのヘッドレストをつける、ことなどだ。(既存のカートはヘッドレストが対象外、「またがり式座席」のものは上記(1)ー(4)が対象外)

規制が適用される時期は、2020年4月1日から(一部は2021年4月1日から)。国交省技術政策課の担当者は「本来は直ちに規制したいところだったが、適合する部品の設計・開発・加工などの時間を考慮して、猶予期間を置いた」と話す。規制適用後に違反が見つかった場合は、「警察と連携して厳しく指導していくことになる」(同担当者)。

マリカーは、遊園地などで見かける「ゴーカート」に似た構造。道路運送車両法では、排気量の関係で「原動機付き自転車」の扱いとなっており、シートベルトの装備は義務ではなかった。

(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama

(弁護士ドットコムニュース)

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