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追突され、新車がまさかの「廃車」...加害者が「無保険」だった場合、どうすれば?
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追突され、新車がまさかの「廃車」...加害者が「無保険」だった場合、どうすれば?

停車中、別の車に後ろから追突され、3か月前に買ったばかりの新車が廃車になったーー。そんな書き込みが、インターネット上の掲示板に投稿された。

投稿者が乗車していたのは買ったばかりの軽自動車、追突してきたのは軽トラックだった。投稿者が渋滞でノロノロと進み、止まったところで後ろから突っ込まれたという。ケガはなかったが、後ろのガラスが全て割れ、後部ドアが開かないなど、「走らせることは可能だけど安全性は確保出来ない」状態だという。

投稿者は自動車保険に入っているが、突っ込んだ軽トラックの運転手は保険に入っていないそうだ。投稿者は「泣き寝入りはしない」と言っている。修理代を支払わせるためにはどうすればいいのか。妹尾悟弁護士に聞いた。

●無保険車事故の解決の難しさ

交通事故が発生した場合、通常は加害者の保険会社から示談交渉(話し合い)の連絡が入り、保険会社との話し合いがつけば、保険会社が損害賠償金を支払ってくれます。

これは、(1)交通事故を原因として、被害者から加害者に対する損害賠償請求権が成立し(2)保険会社が加害者に代わって損害賠償金を支払うことになるからです。

他方、加害者に保険会社がついているということは、加害者に代わって示談交渉を行い、損害賠償金を支払う立場の者がいるということに過ぎません。

したがって、加害者が自動車保険に加入していない場合でも、(1)被害者から加害者に対する損害賠償請求権は成立しますので、被害者が加害者に修理代等を請求することも、法律上は可能です。

ただし、この「法律上は」請求できるというところが曲者です。

たとえ法律上損害賠償請求権が成立する場合であったとしても、加害者側が交渉に応じてこない場合もあります。そうすると、加害車両が自動車保険に加入している場合に比べて、裁判外での交渉では解決に至らない可能性も高いのではないかと思います。

交渉で解決できない以上、損害賠償請求は民事調停や訴訟といった法的手続で解決するほかありません。ここに無保険車に衝突された事案の解決の難しさがあります。

●交渉で解決できなかった…次の一手は?

民事調停とは、簡単に言えば、裁判所が第三者の立場で当事者双方の間に立って、話し合いを進めてくれる手続です。

話し合いで解決するということは、当事者双方がお互いに譲歩して解決をすることでもあります。ですから、実際の損害よりもある程度賠償額を減額したり、分割払いによる賠償を許したりすることになるのが普通です。

他方、本来は認めてもらえない減額や、分割払い等が認められるのは、加害者にとってもメリットにはなります。そのメリットに魅力を感じて加害者側が調停に応じてくる可能性もあります。

しかしながら、民事調停を申し立てたとしても、相手方が賠償金の額や支払条件に合意しなければ調停は成立しません。

また、調停を申し立てても、加害者がそもそも出席すらしてこないこともあり得ます。そうなってしまうと、訴訟を提起し、その判決に基づいて相手方の財産を強制執行するなどの方法で賠償金を回収することを考えざるを得ないと思います。

●弁護士費用をどうする?

交通事故事案は解決に専門的な知識が必要でです。調停手続にせよ、訴訟手続にせよ、専門家の助力なしに適正な賠償額を算定して立証するのは困難だと思います。損害賠償請求をするためには、弁護士に依頼するのがベストですが、ネックになってくるのが弁護士費用でしょう。

もっとも、強制執行がうまくいかなければ弁護士費用分がマイナスになってしまう可能性もあり得ます。また、損害額が比較的少額な物損事件の場合は、そのマイナスを避けるために調停や訴訟をあきらめるといった、「泣き寝入り」になってしまっている例も多いのではないかと思います。

そのような「泣き寝入り」を避けるための手段として有用なのが「弁護士費用等補償保険」です。自分の自動車保険に特約等の形で付帯させるかたちのもの(いわゆる「弁護士特約(弁特)」)が多いと思います。

この保険に加入していると、自分が被害者になった交通事故について、賠償金の請求を依頼する際の弁護士費用を一定額まで保険でカバーしてもらえます。したがって、費用を気にして弁護士への依頼をためらう必要がなくなるわけです。経済的なデメリットに悩まされることなく弁護士に依頼することができるのは大きな魅力だと思います。

相手方が無保険車の事故は、どうしても処理に難しさが伴います。保険でリスクに備えておいて、いざというときは交通事故に詳しい弁護士に依頼されるのがよいでしょう。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

妹尾 悟
妹尾 悟(せのお さとる)弁護士 妹尾綜合法律事務所
政令指定都市勤務を経て、平成21年に弁護士登録。「家庭の問題はいちばん身近でいちばん深刻な法律問題」を合言葉に、市民目線の弁護活動を積極的に展開中。

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