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交通死亡事故で無罪判決「過失の証明ない」、捜査機関の立証不十分との判断 東京地裁
服部啓一郎弁護士(2021年9月10日、東京・霞が関、弁護士ドットコム撮影)

交通死亡事故で無罪判決「過失の証明ない」、捜査機関の立証不十分との判断 東京地裁

都内の交差点をトラックが右折進行した際に直進してきたバイクと衝突した交通事故をめぐり、過失運転致死罪に問われたトラック運転手の男性に、東京地裁は9月9日、無罪判決を出した(求刑禁錮1年4月)。

事故は2018年9月3日19時42分頃に穴守稲荷交差点(東京・大田区)で発生。事故現場の道路の法定速度は時速60キロメートルで、事故時の信号は双方青だった。

被害者は事故約1時間後に全身打撲で死亡したが、地裁は警察による事故の再現実験などでは男性の過失が証明されたとはいえないとして、無罪を言い渡した。

男性の代理人を務めた服部啓一郎弁護士は、9月10日に都内で開かれた会見で、今回の判決を「とても説得的」と評価するとともに、「交通捜査のプロが法廷で主張したにもかかわらず、それが不十分だとされたのは問題」として捜査機関の対応を批判した。

●「バイクを発見できたか」「衝突回避可能だったか」が争点に

裁判では、男性が衝突を回避できた時点で被害者のバイクを発見可能だったか、仮に発見できたとしても、高速度で走行していたバイクとの衝突を回避できたのか等が主に争われた。

服部弁護士によると、検察側は警察の実施した実況見分に基づき、衝突前のバイクの進行速度は時速約70キロメートルだったとして、直進車優先である以上、この程度の速度超過は予見すべきであると主張したという。

もっとも、地裁は、衝突直前の速度は時速約70キロメートルだったかもしれないが、その前の走行速度も同等であったかどうかという点については、説得的な立証があったとはいえないとしたという。

対向車線の確認についても、被害者のバイクが右折待ち車両や信号待ち車両と重なった可能性があり、男性がバイクを他の車両と区別して発見できなかった可能性を排斥できないと判断。発見できたとしてもただちにブレーキを踏むなどの措置を講じることができたかどうかについても、十分に説明されているとはいえないとして、結果回避可能性の証明がされておらず、過失の証明はなく無罪との結論になった。

男性は事故後逮捕されることはなかったものの、免許が取り消されるなどの影響で、正社員のトラック運転手として勤めていた企業からの退職を余儀なくされ、現在は日雇いで働いているという。

服部弁護士は、このまま無罪で判決が確定すればと前置きした上で、「国家賠償請求や免許取り消し処分への対応なども検討する」と話した。

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