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「外回りの営業職にも残業代を払ってほしい」元積水ハウス社員が「労働審判」申し立て
申立人の男性2名

「外回りの営業職にも残業代を払ってほしい」元積水ハウス社員が「労働審判」申し立て

残業代が支払われないのに月80時間近くの時間外労働を強いられ、肉体的・精神的な負担から退職を余儀なくされたとして、大手住宅メーカー「積水ハウス」(本社・大阪市)の元社員の男性2人(いずれも20代)が7月30日、未払い残業代などを求めて、東京地裁に労働審判を申し立てた。

申し立て後、東京・霞ヶ関の厚生労働省記者クラブで開いた記者会見で、申立人のAさんは「先輩などから『駅前でナンパしてこい』『寮にデリヘルを呼べ』と命令されることもあった」と、悔しさをにじませて語った。

●先輩に「デリヘルを呼べ」と言われた

申立書などによると、申立人のAさんとBさんは、新卒で同社に入社し、外回りの営業職を担当。同社では、外回りの営業職について、事業所の外で働いているため正確な労働時間を算定しにくいとして、「事業場外みなし労働時間制度」を適用していた。そのため、残業代が支払われなかったが、実際には、Aさんは多い月で約67時間、Bさんは約79時間の時間外労働を強いられる状態だったという。

また、Aさんは、過労死ライン(月80時間)に迫る長時間残業だけでなく、上司や先輩からのパワーハラスメントにも悩まされていた、と主張する。

日常的に「お前は空気が読めない。日本語が通じない」と嘲笑されていた。さらに、休日の前日に開かれる飲み会への参加を義務づけられ、上司や先輩から吐くまで飲酒するよう強要されたという。

Aさんによると、社内でのパワハラに加えて、社員寮でも先輩による嫌がらせがあった。ある日の深夜、Aさんが自室にいたところ、突然押し掛けてきた5〜6人の先輩社員に部屋を荒らされた後、「デリヘルを呼べ」と命令された。

先輩社員が部屋の外で見張っていたため、Aさんは仕方なく女性を呼んだ。何もしないまま時間をつぶし、代金のみ支払って、女性に帰ってもらったそうだ。「なぜ先輩たちがそんな命令をしたのか意味が分かりませんが、外で監視されているので断れなかった」

Aさんは、労働審判の申し立てのなかで、パワハラによって心身の苦痛を受けたとして、損害賠償を請求している。

●入社1年目で退社を余儀なくされた

会社でも自宅でもストレスにさらされたAさんは、しだいに不眠や頭痛、腹痛といった症状がでるようになった。「適応障害」の診断を受け、休職して療養していたが、これ以上同社で働くことが難しいと判断し、入社後1年経たずして自主退職した。今も当時のことを思い出すだけで、精神的に動揺してしまうという。

一方、申立人として名乗りを上げたもう1人の男性であるBさんも、外回りの営業職だったため、「事業場外みなし労働時間制度」が適用され、残業代が支払われなかった。しかし、実際には、多いときで月79時間の時間外労働を強いられたという。心身ともに限界を迎えたBさんは、入社後約11カ月で自主退職した。

「今でも、あの辛い日々を思い出したくはありませんが、誰かが行動を起こさないとあの会社は変わらないと感じ、今回、労働審判を起こすことにしました」と、Bさんは労働審判を申し立てた理由を語った。

2人の代理人の明石順平弁護士は、AさんとBさんが「会社から貸与された携帯電話やiPadで、事業所の外でも上司と頻繁に連絡を取っていた」などとして、上司が労働時間を把握しにくかったとはいえないと指摘し、次のように話した。

「業界トップクラスのこの会社で、『事業場外みなし』という制度を使って、残業代を支払っていないという現状がある。おそらく、他の住宅販売会社の中にも、この制度を適用して、残業代の支払いをまぬがれているところがあるのではないか。そうした会社にも、影響が及ぶと思う」と、今回の労働審判の意義を語った。

積水ハウスの広報担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「申立書が届いていないのでコメントできない」と話している。

(弁護士ドットコムニュース)

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