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法廷に立つ「生身の人間」に衝撃受けた 大学生が署名活動「すべての中学生に裁判傍聴を」
真栄田早希さん(提供写真)

法廷に立つ「生身の人間」に衝撃受けた 大学生が署名活動「すべての中学生に裁判傍聴を」

「すべての中学校で、裁判を傍聴する機会を設けてください」

そう呼びかけているのは、中央大学法学部1年生の真栄田早希さん(19歳)だ。オンライン署名サイト「change.org」で今年8月からキャンペーンを立ち上げ、賛同者の署名を集めている。

中学生に裁判を傍聴してほしいという思いは、自身の経験からという真栄田さん。キャンペーンを立ち上げたきっかけや思いを聞いた。(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)

●初めて傍聴した裁判に衝撃

「なぜ人は人を裁くことができるのだろう」

そんなことを漠然と考えていた中学3年の夏、真栄田さんは初めて裁判の傍聴に行く機会があった。公民の夏休みの宿題の候補のひとつに「裁判の傍聴」があり、ひとりで東京地裁に向かった。

東京地裁のロビーには、その日の裁判のスケジュールが掲載されている開廷表がある。そこから選んだのは、特殊詐欺事件で受け子だった若い男性の裁判だった。

真栄田さんは、法廷に立つ男性の姿に衝撃を受けたという。新聞やテレビで報道される「犯罪者」という記号のようなイメージは覆され、目の前には貧しさゆえに犯行に及んだという「生身の人間」がいた

「この裁判の傍聴をきっかけに、加害者に刑罰を与えることは本当に最適な方法なのだろうか、もっと弱い立場の人たちを支える仕組みが重要なのではないかなど、いろいろなことを考えるようになりました」

●加害者である前に被害者

その後、高校生3年になった真栄田さんは、模試の国語の問題で、作家の寮美千子さんがまとめた奈良少年刑務所に収容された少年たちの詩集に出会った。加害者である前に、被害者だった少年たちの、心からの言葉がつづられていた。

「涙が止まりませんでした。これが私の知りたかったことだと思いました。その人が犯した犯罪自体は許されることではありませんが、そこだけを切り取って、その人の人生を否定することは間違っていると思いました」

真栄田さんは「正しく知らないこと」が、差別や偏見を生んでいると考えたという。

「社会から排除するのではなく、正しく知って弱い立場にいる人たちを支える。そのためには、当事者ではない人たちの意識も変えないと、根本的な解決にはつながらないと考えました」

そのためには、すべての中学生に裁判を傍聴してもらいたいと、キャンペーンを立ち上げたという。「裁判を傍聴して、お互いに思いを共有する機会を持つことで、社会問題に関心を持つ人を増やしていきたいです」

●「ひとりでも多くの人に裁判所へ」

ただ裁判を傍聴するのではなく、真栄田さんは次のような内容を提案している。

・授業ではなく、夏休みなどの課題として実施
・事前学習と感想の共有に、総合学習(または公民)の2コマを割く
・傍聴は強制しないが、事前学習と感想の共有は全員参加
・課題は社会科の教員(または担任)が成績評価をする(後述)
・都道府県ごとにある地方裁判所
・刑事事件、一審

現在、真栄田さんは、裁判傍聴の際の適切な指導をおこなうためのテキストを作成中だ。「真剣に向き合う姿勢を持つこと、心のケア、教育的効果などに、十分配慮していきます」という。

オンライン署名は、文科省や各自治体の教育委員会に提出する予定だが、キャンペーンには期限を設けていない。「署名の数よりも、ひとりでも多くの人に裁判所に足を運んでもらえればと思っています。学校や教育委員会にも提案していきたいです」と話している。

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