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社員を揶揄する「号外」貼り出し、ソニー生命の「社内いじめ」認める 東京地裁
会見の様子(2021年3月23日、東京・霞が関、弁護士ドットコムニュース撮影)

社員を揶揄する「号外」貼り出し、ソニー生命の「社内いじめ」認める 東京地裁

ソニー生命保険(千代田区)でライフプランナー(保険外交員)として働く男性(56)が、嫌がらせの掲示を職場に張り出されるなどの「社内いじめ」を受けたとして、同僚、支社長、同社を相手取り、計1500万円の損害賠償を求めて裁判を起こした。

東京地裁は3月23日、原告の社会的評価を低下させたとして、被告らに計80万円の支払いを命じた。

男性は「この年齢になって、こんな嫌がらせを受けるとは悔しくてなりません」と職場での厳しい環境を振り返った。

●同僚のいやがらせの始まり

裁判を起こした男性は1995年8月に入社し、都内の支社で働いている。

2017年3月6日、男性は、先輩社員の内部規定違反行為(秘書にテレアポをさせる行為)を発見したことから、支社長らに問題を伝え、適切な対応を求めた。その後も支社長との面談を重ねた。

同年3月21日、男性が働くブースから見えるように、職場に男性を揶揄するような嫌がらせのフラッグ(旗)が、別の同僚によって張り出された。ほかにも、新聞を模した「なんちゃってタイムス」なる張り紙が掲示され、これは同年4月下旬ごろまで断続的に続いた。

●「盗聴するような人」と印象づけさせた。男性側の主張

男性は2018年12月、嫌がらせによって名誉を毀損されたなどとして、同僚と支社長らを東京地裁に提訴した。

男性は、嫌がらせの原因は、支社長が男性との面談内容を同僚らに明かしたうえで、「秘書のテレアポの様子を録音」していたなど誤った情報を伝えたためと主張。

また、その情報を聞いた同僚が、職場の会話を「秘密録音・盗聴」している社員であるかのように印象づけるため、嫌がらせの掲示をして、男性の社会的評価を低下させたと訴えた。

●裁判所は「名誉毀損明らか」と判断

東京地裁は、「秘密録音や盗聴をしているかのような印象を与える」として、同僚による掲示行為が、男性への名誉毀損に当たると認定し、精神的苦痛は多大と評価した。

また、男性と支社長との面談を録音したデータ(証拠)から、男性が面談の場で、テレアポ問題に関する録音があるなどと話をした客観的事実はなかったと認めた。そのうえで、支社長が、虚偽の情報を伝達していたことに過失があったと評価した。

同社にも使用者責任を認めた。

●問題となった掲示

同僚が社内に張り出した嫌がらせが、会見資料として配布された。いくつか紹介する。

・「システム稼働中」という文字とともに、盗聴器を発見した人のイラスト「システム稼働中」という文字とともに、盗聴器を発見した人のイラスト 「システム稼働中」という文字とともに、盗聴器を発見した人のイラスト

・片耳を大きくして、何か聞こうとしているような男性のイラスト片耳を大きくして、何か聞こうとしているような男性のイラスト 片耳を大きくして、何か聞こうとしているような男性のイラスト

・「週刊ナンチャッテタイムス」と題した掲示「週刊ナンチャッテタイムス」と題した掲示 「週刊ナンチャッテタイムス」と題した掲示

・「読者からの感想」として、「危うく洗脳されるところでした」などと記載「読者からの感想」として、「危うく洗脳されるところでした」などと記載(加工は編集部) 「読者からの感想」として、「危うく洗脳されるところでした」などと記載(加工は編集部)

●客観的証拠を残すことは大事だとわかった

判決後の会見で、男性の代理人弁護士は、地裁の認定において、男性が支社長との面談内容を録音していた証拠が役立ったとした。

「会社に行くのもつらかったし、仕事もままならなかった。人間関係の切り剥がしはつらい。裁判でいったん決着はつくが、会社には非を認めていただいて、それなりの対応をしてほしい」(原告の男性)

●会社側は

ソニー生命は、取材に「まだ判決文が届かず、現時点でコメントできないが、届き次第、真摯に対応していく」と答えた。

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