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労働組合を訴えた社労士が敗訴 「SNSで名誉毀損」など主張、東京地裁は認めず
判決会見の様子(2020年11月13日、東京・霞が関の厚労省、弁護士ドットコムニュース)

労働組合を訴えた社労士が敗訴 「SNSで名誉毀損」など主張、東京地裁は認めず

飲食店の運営会社の役員を務めていた特定社会保険労務士が、団体交渉の場で労働組合から威迫行為を受けたほか、SNSなどの投稿による名誉毀損があったなどとして、550万円を求めていた裁判で、東京地裁(佐久間健吉裁判長)は11月13日、原告の訴えを棄却する判決を下した。

判決後の会見で、訴えられていた首都圏青年ユニオンの役員らは「団体交渉のやりかたが正当だったと裁判官にも受け入れられ、自分たちの活動が認められた」と話した。

●ことの顛末

飲食店のアルバイトをしていた大学生(当時)が退職時に、店長との間でトラブルに見舞われた。大学生は、首都圏青年ユニオンに加盟し、店の運営会社と2度の団体交渉を経て、和解に至った(2017年3月)。

団交を担当していたのが、同社の執行役員(当時)で、特定社会保険労務士の原告だった。

原告は、2017年12月、ユニオン執行委員長の原田仁希氏と、ユニオン元事務局長の山田真吾氏を相手に裁判を起こした(当初、大学生も被告に含まれていたが、その後、訴えの変更手続きがあり、外される)。

訴状などによると、裁判の主な争点は以下のもの。

(1)団体交渉の開始前や交渉の場で、被告らが原告にした言動が、原告を威迫する不法行為であるか。 (2)「ユニオン幹部」が、原告を批難するツイートを発信したことについて、被告らに共同不法行為が成立するか。 (3)山田氏が執筆した雑誌記事(本件訴訟を「スラップ訴訟」であると紹介)が、原告への名誉毀損となるか。

裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。理由は次のようなものだった。

(1)原告の主張を事実と認める証拠がない。 (2)投稿について、被告らは、共同不法行為責任や使用者責任を負わない。 (3)「本件訴えはスラップ訴訟である」との意見ないし論評もまた論評としての域を逸脱したものとまでいうことはできない。

裁判所は「本件訴え提起の目的は、本件組合の活動を指弾し、これに掣肘(せいちゅう)を加えることにもあることが窺われるといえる」とも判示している。

●ユニオン「組合活動のやりかたが認められた」

代理人を務めた大山勇一弁護士は、和解や合意で終わった案件で、後から威迫行為があったと訴えられることによって、「組合の活動を安心してできない」として、勝訴は「労働組合の活動をしている人に安心感を与えるもの」と評価した。

原田氏は「ツイッターでの発信や雑誌での発信は(組合の活動の)大事なツール。社会的発信も裁判官に認めていただいたと感じている」と語った。

●原告の社労士「海外で裁判を起こす」

本件について、原告の社労士が11月17日、コメントを発表した。

社労士の男性は、「必要性がない」として、控訴しない考えを示した。

社労士としての仕事をほとんど行なっておらず、海外での事業に注力していることから、ユニオンによるインターネット上の発信によって、「海外(法人)で大きな損害が発生しています」という。

そこで、損害の及んだとされる複数の国で、「首都圏青年ユニオンを相手方として訴訟提起する」との意向を明らかにした。

(編注:原告の社労士のコメントを11月17日午後3時20分に追記した)

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