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音楽教室に勝訴したJASRAC、地裁判決は「一般常識に合致」「丁寧に説明したい」
JASRACの世古和博常務理事(2020年2月28日/弁護士ドットコム撮影/東京都内)

音楽教室に勝訴したJASRAC、地裁判決は「一般常識に合致」「丁寧に説明したい」

音楽教室での演奏をめぐる注目の裁判で勝訴したことを受けて、JASRAC(日本音楽著作権協会)は2月28日、都内で記者会見を開いた。

JASRACの世古和博常務理事は「これまでの著作権管理業務を通じて培ってきた判断が全面的に認められたものと受け止めている」「音楽教室事業者のみなさまの理解が得られるよう取り組みを進めて、創作者の対価還元を通じて音楽文化の発展に努めていく」と述べた。

代理人をつとめた田中豊弁護士は、判決について「全体として、音楽教室ビジネスの実態を正確に把握したうえで、法律論としても堅牢(けんろう)な理屈にもとづいた判決になっている。著作権法の観点からだけではなく、一般人の常識にも合致するものだと考えられる」と語った。

●JASRACの主張がほぼ全面的に支持された

JASRACは2017年2月、音楽教室で、教師や生徒が楽曲を演奏することについて、著作権使用料を徴収する方針を示した。一方、ヤマハ音楽振興会など音楽教室は「音楽教育を守る会」を結成。音楽教室側は同年6月、東京地裁に提訴した。

音楽教室で教師や生徒が演奏することに「演奏権」(著作権法22条)が及ぶと、JASRACに著作権使用料を徴収する権利があることになる。

著作権法22条は「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下『公に』という)上演し、又は演奏する権利を専有する」とさだめている。

そのため、音楽教室での演奏は(1)「公衆」に対する「公の演奏」にもあたるのか、(2)「聞かせることを目的」とした演奏にあたるのかーーが主な争点となった。

東京地裁の佐藤裁判長は、(1)について、音楽の利用主体は、「教師や生徒ではなく、音楽教室事業者であると認めるのが相当」としたうえで、生徒の入れ替わりなどがある実態を踏まえて、「音楽教室の生徒は、不特定または多数にあたるから『公衆』に該当する」と判断した。

また、(2)の争点については、「音楽教室のレッスンは、教師が演奏をおこなって生徒に聞かせることと、生徒が演奏をおこなって教師に聞いてもらうことを繰り返す中で、演奏技術の教授がおこなわれる」という実態などから「聞かせることを目的」として演奏していることは明らかであるとした。

ほぼ全面的にJASRAC側の主張が支持されたかたちだ。

●「一般人の常識」にも合致するのか?

上記のように田中弁護士は「(判決は)一般人の常識にも合致する」と述べた。だが、音楽教室からの著作権使用料の徴収については、批判もあり、約57万人分の反対署名も集まっている。JASRACとして、どう受けとめているのか。

この点について、記者から問われると、世古常務理事は次のように回答した。

「法律論については、一般の方のご理解を得られるのはなかなか難しいが、簡単に言ってしまえば、営利を目的として音楽を利用されているので、そういう方から対価が還元されていないことはおかしい。まさに判決の中で言われたことだ。

これまで、『教育であれば、使用料がかからない』と誤解されている方々にも、今申し上げたように、広報活動などを通じて、丁寧に説明していく」(世古常務理事)

●音楽教室側は控訴に向けて準備中

判決を受けて、原告である音楽教室側は、次のような声明文を発表した。判決文の内容を確認したうえで、控訴に向けて準備していくとしている。

「真に音楽文化の発展を考えるのであれば、教育の場で生徒が学習のためにする演奏であることや、民間の音楽教室における音楽教育の重要性について十分な配慮がなされなければなりません」

「それが音楽の裾野を広げ、ひいては権利者のみなさまの利益にかなうこととなるはずです。原告団は、日本の音楽教育および将来の音楽文化の発展を守るべく、引き続き、音楽教室のレッスンにおける演奏については演奏権が及ばないことを強く主張してまいります」

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