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「彼氏と週どれくらいやってるの?」 横行する就活ハラスメント、法整備を厚労省に要求
就活生に対する法整備を厚労省に求めた小島慶子さんら(厚労省記者クラブ、2019年11月12日、弁護士ドットコムニュース撮影)

「彼氏と週どれくらいやってるの?」 横行する就活ハラスメント、法整備を厚労省に要求

厚生労働省が10月、企業にパワーハラスメント防止を求める指針案を出したが、対象に就活生やフリーランスなどが含まれてなかった。これを受け、就活の際に学生が受けているハラスメントをなくす活動をしているエッセイストでタレントの小島慶子さんや、コミュニティサイトを運営する「キュカ」らが11月12日、厚労省に要望を出した。

要望では、法律で就活生をハラスメントから守ることを義務付けることや、相談窓口の設置などを求めている。要望とともに、実際に就活生が体験したハラスメントの事例や、この要望の賛同者約1万1300筆の署名も提出された。

厚労省の記者クラブで同日、会見を行った小島さんは「就活では、色々な形でのハラスメントが行われていますが、放置されています」として、就活ハラスメントの現状に強い懸念を示した。

●「企業に対して、就活生をハラスメントから守ることを義務付けて」

会見で小島さんは、今回の要望を提出した背景として、今年6月にスイス・ジュネーブで開かれた国際労働機関(ILO)の総会で、仕事上の暴力やハラスメントを撤廃するための条約が採択されたことを説明した。

この条約の対象には就活生が含まれており、多くの国がこの条約を批准し、ハラスメント対策を進める予定だが、日本では使用者団体である経団連が慎重な態度を示しているという。また、厚労省が10月に示した職場のハラスメント対策に関する指針の草案にも、就活生は含まれていなかった。

「この状況に危機感を感じまして、就活ハラスメントをなくすべく署名活動をはじめました。現在、1万筆を超える賛同のご証明をいただき、要望とともに厚労省に提出しました」

要望では次のようなことを求めている(一部抜粋)。

・厚労省は、ハラスメント関係法案の指針に、就活生のハラスメントはあってはならないこと、企業が取り組むべき事項をしっかり書いてください。

・厚労省は、労働局やハローワークなど行政の相談状況を調べて、就活生が使いやすく、解決できる相談窓口にしてください。

・法律で、企業に対して、就活生をハラスメントから守ることを義務付けてください。

・経団連など使用者団体は、専門委員会を立ち上げ、就活ハラスメントをなくす取組みにすぐに着手してください。

●「就活生は法の保護が及ばない」

会見では、労働問題に詳しい佐々木亮弁護士が、就活生の置かれた法律的な立場について解説した。

「就活生は労働契約を結んでいない状態。法の保護が及んでいないのが実態です。面接に関しては、質問すべきではないことが職安法の指針にあるが、その程度にとどまっています。法律の一部だけ、指針だけで定めても、あまり実効性がないのが現状。就活ハラスメントをなくすには、法律の土台をととのえる必要がある」

また、政治アイドルの町田彩夏さんは、就活中に大手広告代理店の面接であったハラスメントのつらい体験を涙ながらに語った。

「ある広告代理店の役員面接では、化粧が濃いとか、スカートが短い、女を武器にしているといったことを言われる一方、レスポンスが早いから、そんなことは考えたことがないと無知を装った方がいいとアドバイスを受けました。広告の世界で生きたいのであればと言われて、この人のいうことを聞かなければと思いました」

その後の面接でも、町田さんは「普通のスーツ」に「普通のメイク」でできるだけ女性らしくない服装をしながら、中身は無知の女性を演じるという「ダブルバインドに苛まされました」と話した。採用担当者にも、「女性は月のバイオリズムがあって体調が良い時、悪い時があるけど、社会人として、役員面接の時は体調をととのえなければならない」と言われたという。

「今でも、自分の中で忘れられない大きな出来事でした。悔しいという思いが強いです。この広告代理店は株主総会で、会社側が面接でのセクハラを認めたそうですが、私には正式な謝罪はありません。もう同じ被害を生み出さないでほしいです」

●「体育会系は元気以外に、特技はあるのかな?」

この活動の主体となっているのは「キュカ」では、この春から、「#就活ハラスメントをなくしてください」というハッシュタグをつけて就活生のハラスメント体験を募ったところ、現在までに約60例が集まった。

その中には、面接で「彼氏はいるの?」「週どれくらいやってるの?」「妻とセックスレスでねー」と言われた体験や、面接官ではない男性社員から食事に誘われて断れなかった体験、パンツスーツで就活していたところ「スカート履かない女は男と一緒だ」と言われた体験など女子学生に対する被害が寄せられた。

また、他にも、趣味を聞かれて昆虫採集であると答えたところ、失笑され「大学生にもなって虫かご持って楽しいかい?」とあおりとも聞こえる発言を執拗にされた学生や、「体育会系は元気以外に、特技はあるのかな?」と聞かれ、嫌な思いをしたという学生の声も上がっている。

これらの体験談は要望とともに、厚労省に提出された。

キュカのプロダクト開発責任者である片山玲文さんは、「厚労省では、ハラスメント防止の啓発冊子を作成して事業主に配布していますが、徹底されていません。ルール以前ですが、お互いを人として尊重する意識に欠けていると思います」と指摘。今後、文科省や経団連にも同様の要望を出す予定という。

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