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小学生の列に車で突っ込んだ女性に「無罪」判決、裁判所はなぜ有罪にできなかった?
画像はイメージです(セニーニャ/PIXTA)

小学生の列に車で突っ込んだ女性に「無罪」判決、裁判所はなぜ有罪にできなかった?

大阪府豊中市で2015年、小学生の列に車で突っ込んで、6人に重軽傷を負わせたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)などの罪に問われた女性の控訴審。大阪高裁(増田耕児裁判長)は12月中旬、検察側の控訴を棄却し、無罪とした1審判決を支持した。

報道によると、女性は2015年5月、睡眠導入剤の服用した翌朝、運転に支障が生じるおそれがあると知りながら、運転して事故を起こした疑いが持たれていた。検察側は、眠気があったのに運転を続けたなどと主張していたが、増田裁判長は「ふらつくなどの居眠り運転の特徴が認められない」と否定した。

さらに、増田裁判長は、女性に何らかの過失があったことは認めながらも、検察側が眠気以外の過失をあげていなかったことから、「検察が訴因を的確に設定すれば、有罪になった可能性が高い」と批判している。

裁判長自身が「有罪になった可能性が高い」と言っているにもかかわらず、有罪にできないのはなぜなのか。冨本和男弁護士に聞いた。

●起訴状に書かれた犯罪事実しか審判できない

「有罪にできないのは、検察官が主張する『訴因』にない犯罪事実について、裁判所が判断できないからです」

冨本弁護士はこう述べる。少しむずかしいが、どういうことだろうか。

「『訴因』とは、検察官が起訴状に記載した具体的な犯罪事実のことをいいます。検察官は、この『訴因』を裁判所に認めてもらうために、主張・立証をおこないます。

一方、この起訴状に記載された『訴因」に対して、被告人・弁護人は、必要な主張・立証(反論など)をおこないます。そして、裁判所はこの『訴因』についてのみ、審判するわけです。

要するに、裁判所には、検察官が起訴状に記載した具体的な犯罪事実だけしか、審判する権利も義務もありません。勝手に『これこれこういう過失があった』と審判することは許されないのです。

今回のケースでも、その結果として、裁判所は女性を無罪にせざるをえなかったわけです」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

冨本 和男
冨本 和男(とみもと かずお)弁護士 法律事務所あすか
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。

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