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女子高生から「ヌード写真を撮って」と頼まれた――撮影したら「児童ポルノ製造罪」?
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女子高生から「ヌード写真を撮って」と頼まれた――撮影したら「児童ポルノ製造罪」?

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趣味で写真を撮っている男性が、知人の女性に「キレイに撮ってね」とお願いされた。こんな風に頼まれたら、「よし、腕の見せ所だ」と張り切って応じるかもしれない。だが、もし相手が「女子高生」で、しかも「ヌードを撮ってほしい」と言ってきたとしたら、どうだろうか?

そんなお願いをされたという男性が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに質問を寄せていた。男性はとりあえず「違法だろうと思って断った」そうだが、どこか未練があるのか、「局部が露出するわけでもなく、屋内で個人的に撮影するだけなので、本当に違法なのかよく分かりません」とたずねている。

女子高生にこんな風に頼まれてヌード撮影に応じたら、やっぱり「違法」なのだろうか。そんなことをしたら「犯罪」になってしまうのか。奥村徹弁護士に聞いた。

●「児童ポルノ」になる可能性

「公表したり、他人に提供したりしない、プライベートなヌード写真を撮影することは、相手が『大人』なら問題がありません。

しかし、相手が18歳未満だと、話が変わってきます。

撮影された写真が、法律で禁止されている『児童ポルノ』にあたる可能性があるからです」

18歳未満のヌード写真は「児童ポルノ」になるのだろうか?

「児童が性交渉をしている姿はもちろんダメですが、性交渉とは直接むすびつかない内容でも、次の3つの条件を満たすような児童の姿態を撮影した写真は、児童ポルノに該当する可能性があります。

(1)児童が衣服を全部、または一部着けていない

(2)児童の『性的な部位』がことさらに露出・強調されている

(3)性欲を興奮させる・刺激する内容

なお、性的な部位とは『性器等、性器等の周辺部、臀部、胸部』をいいます」

こうした定義からすると、性器を写さなければOK、とはいかないようだ。

「もし撮影された画像が『児童ポルノ』にあたる場合、たとえ公表したり、他人へ提供したりするつもりがなくても、『頼まれて撮影しただけ』で、児童ポルノ法7条4項の製造罪(4項製造罪)に該当するおそれがあります」

たとえ、撮られる児童自身が希望した場合でも、ダメなのだろうか?

「2004年に施行された改正法をつくった国会議員による解説書『よくわかる改正児童買春・児童ポルノ禁止法』(森山真弓・野田聖子 p197)を見てみましょう。

この本では、4項製造罪を処罰する趣旨について、『姿態をとらせた上、これを写真等に描写し、よって当該児童についての児童ポルノを製造する行為が、児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為に他ならない』とか、『ひとたび児童ポルノが製造された場合には、流通の可能性が新たに生ずることとなり、このような場合には児童を性的行為の対象とする社会的風潮が助長されることになる』と説明しています。

さらに、『同意』があった場合でも『その児童の尊厳が害されているといえますし、そもそも、この児童の同意は、この児童の判断能力が未成熟なことに基づくものであると考えられますので、当罰性が認められ・・・罪が成立する』と解説しています」

●「犯罪とならない余地」もある?

「ただ、18歳未満のヌード写真を撮影しても、犯罪とならない余地が全くないわけではありません」

奥村弁護士はそのように語る。

児童ポルノ禁止法の7条4項は「児童に(一定の)姿態をとらせ、これを写真・・・描写することにより・・・児童ポルノを製造したもの」を処罰すると規定している。

奥村弁護士は、この条文の「姿態をとらせ」という点に着目して、次のように指摘する。「製造罪の『姿態をとらせ』とは、製造した人の言動等によって、被写体となった児童が、その姿態をとるに至ったことをいいます。したがって、撮影者が何も指示せず、児童が自発的にそうしたポーズをとった場合には、製造罪に該当しない可能性があるのです」

●「正当行為」とは?

「また、事情によっては、撮影が『正当行為』(刑法35条)とみなされる可能性もあるでしょう。もし正当行為とみなされれば、違法ではなくなる。つまり、犯罪でなくなります」

正当行為とは何だろうか?

「たとえば、『ボクサーが試合で相手を殴っても犯罪にならない』といえば、イメージしやすいでしょうか。

児童との性交を撮影したことが『正当行為』と言えるかどうかについて、2007年3月8日付けの札幌高裁の判例では、次のような判断が示されています。

『児童との真筆な交際が社会的に相当とされる場合に、その交際をしている者が児童の承諾のもとで性交しあるいはその裸体の写真を撮影するなど、児童の承諾があり、かつ、この承諾が社会的にみて相当であると認められる場合には、違法性が阻却され、犯罪が成立しない場合もありうると解される』。

これは、いわゆる『ハメ撮り』をした場合についての判断ですから、『性行為を伴わない芸術的な写真撮影』の場合であれば、この判例で示された判断基準よりも、正当行為になるための条件がやや緩和される可能性があると思います」

どうやら、18歳未満の女子高生から「私のヌードを撮って」と言われて応じた場合、どんなときも絶対に「アウト」というわけではなさそうだ。だが、違法とされる可能性も十分にあるので、軽々しく「OK」していい話ではない、ということなのだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

奥村 徹
奥村 徹(おくむら とおる)弁護士 奥村&田中法律事務所
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。

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